II-P-137
総肺静脈還流異常症修復術後の肺静脈閉塞に対する治療成績と予後
榊原記念病院小児科1),心臓血管外科2)
西村智美1),朴 仁三1),高橋幸宏2)

【目的】当院における,総肺静脈還流異常(以下TAPVC)修復術後の肺静脈閉塞性病変(以下PVO)に対しPVO解除術を行った症例について,PVOの症状,部位,予後をheterotaxia(以下H群)と非heterotaxia(以下N群)に分けて検討する.【対象】2004年 1 月~2008年12月に当院でTAPVC修復術を行い初回手術後生存した41例(H群13例,N群28例)から,PVO解除術を要したH群とN群を抽出した.【結果】PVO解除術を要したものは,H群で13例中 5 例(38.5%),N群で28例中 6 例(21.4%)で,その内訳は,H群ではIa型 1 例,III型 2 例,VI型 2 例,N群ではIa型 4 例,Ib型 2 例であった.PVOの症状は,H群ではチアノーゼ増強 4 例,哺乳不良 2 例,呼吸障害 3 例,N群では呼吸障害 5 例,顔面蒼白 3 例,哺乳不良 2 例であり,狭窄部位はH群で吻合部狭窄 3 例,両側肺静脈狭窄 2 例,N群では吻合部狭窄 2 例,両側肺静脈狭窄 3 例,右肺静脈狭窄 1 例であった.解除術回数は,H群で平均1.6回(1~3 回),N群で平均1.3回(1~2 回),TAPVC修復術から初回PVO解除術までの期間は,H群で平均222日(0~463日),N群で平均104日(2~380日)であった.予後は,H群で死亡 2 例.生存例 3 例中 2 例は吻合部狭窄の解除後にPVO消失し,それぞれTCPC,Glenn手術が施行されており,1 例は 3 回のPVO解除術後も左肺静脈閉塞と右肺静脈狭窄が残存し,現在も人工呼吸管理中である.一方,N群では死亡 2 例.生存例 4 例中,PVO消失 2 例,右上PVO残存が 1 例,左上下PVO残存が 1 例であった.以上より,PVO解除術後の予後は,PVO消失例 4 例(36%),死亡例 4 例(36%)と変わりなかった.【結語】PVOを発症した場合の生命予後は不良である.

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