II-P-139
エンドセリン-1 のラット心室筋細胞に対する効果
日本医科大学小児科
勝部康弘,阿部正徳,上砂光裕,深澤隆治,小川俊一

【背景ならびに目的】エンドセリン-1(ET-1)は21個のアミノ酸からなるペプチドで,血管内皮細胞から分離されたのははじめでその後,心筋など非血管組織においても分泌が確認されている.さまざまな作用を呈するが,血管平滑筋においては血管収縮作用を示す.心筋細胞においても病態生理学的に重要な作用を呈するといわれている.われわれはこれまで,ET-1の末梢肺動脈血管平滑筋細胞Kチャネル(Kvチャネル,K(ATP)チャネル)に対するET-1の効果を検討してきた.今回,ET-1の心室筋細胞Ca電流,K(ATP)電流への効果について電気生理学的に検討を行った.【方法】酵素処理により新生仔ラット(2~5 日齢)から単一心室筋細胞は作成し,単離した細胞に対しパッチクランプ法(全細胞型電圧固定)によりCa電流ならびにK(ATP電流に対するET-1の効果を調べた.【結果】ET-1は濃度依存性に心室筋細胞Ca電流を減少させたばかりでなく,β刺激薬(イソプロテレノール)ならびにアデニルシクラーゼ刺激薬(フォルスコリン)で増加させたCa電流も完全に抑制した.K電流に対しては,開口薬を使用していない状態でET-1はK電流に対する効果を認めなかったが,K(ATP)チャネル開口薬(ピナシジール)で誘発されたK(ATP)電流は濃度依存性にほぼ完全に抑制した.【まとめ】ET-1は新生仔の心室筋に対しては薬物非刺激時のCaチャネルを抑制したばかりでなく,β刺激薬ならびにアデニルシクラーゼ刺激薬で増強したCa電流も抑制し,収縮能を低下させる可能性があることが示唆された.一方,心筋保護作用を示すといわれているK(ATP)電流を抑制した.これらの結果より,心不全などの病態においてET-1はさらに病態を悪化させる可能性があり,ET-1を抑制する必要があると考えられる.

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