II-P-140
ブタ新生仔大血管膜電位依存性カリウムチャネル複合体の分離
東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート1),東京女子医科大学循環器小児科2)
羽山恵美子1),中西敏雄1,2)

【背景】体血管は高酸素で収縮し低酸素で弛緩するが,肺血管は高酸素で拡張し低酸素で収縮する.血管の収縮弛緩は静止膜電位に依存するが,これは主にカリウムチャネルによって制御され,閉じれば脱分極となり血管は収縮する.生後直後および胎仔の大血管に発現する主な膜電位依存性カリウムチャネル(Kv)αサブユニットは α1.5,β1サブユニットはβ1.2であり,α1.5 はβ1.2によって不活性化を促進され負の制御を受ける.【目的】新生児の大血管からKv複合体を抽出し,複合体を構成する蛋白質を同定すること.【方法】ブタ新生児の大血管試料から非イオン性界面活性剤を含む緩衝液を用いてKv複合体を抽出した.抗ブタKv1.5抗体を用いて免疫沈降濃縮し,一次元目にblue-native(BN)-PAGE,二次元目にSDS-PAGEを用いた二次元電気泳動法により分離した.質量分析用にはSypro-Ruby染色を行い,切り出したスポットはtrypsinゲル内消化後,MALDI-TOF(Bruker Daltonics AutoflexII)およびmascotにより同定した.また,各種抗体で確認するためにWestern blotを作製した.【結果・考察】新生児の大動脈および肺動脈から抽出されたKv1.5複合体は,BN-PAGEでは1,000~500kDaの広範囲に分離された.両複合体中にKv1.5が含まれていることを免疫的に確認した.Kv1.5複合体はマルチマー状のSDS-PAGEの泳動パターンを示したことから多量体として存在している可能性が示された.また,大動脈より肺動脈中でKv1.5蛋白質は豊富であった.なお,複合体を構成する蛋白質としてlipid raftに関係する蛋白質などが検出されている.

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