II-P-143
川崎病急性期治療として免疫グロブリン 2g/kg投与症例においても早期投与は冠動脈障害発生頻度を上げるか?
関西医科大学小児科1),自治医科大学公衆衛生学2)
荻野廣太郎1),中村好一2),上原里程2),屋代真弓2),柳川 洋2)

【目的】われわれは第15・16回全国調査資料を用いて,免疫グロブリン(IVIG)を早期に使用した症例では冠動脈障害(CAL)発生頻度が高いことを報告した(小児内科35:1567–1569,2003).今回は第19回川崎病全国調査資料を用い,初回投与量が 2g/kgの症例での投与開始病日別のCAL発生頻度を検討した.【対象および方法】報告された患者総数は20,475例で,重複症例を一本化した後,IVIG治療を受けた患者数は17,286例であった.うち初回投与量として 2g/kg(1,901~2,100mg/kg)が投与され,かつ投与開始病日が明らかな患者数は11,627例で,これを今回の対象とした.投与開始病日別にCAL発生頻度を調べ,第 1~4 病日投与開始例(1~4 病日群),第 5~7 病日投与開始例(5~7 病日群),第 8~10病日投与開始例(8~10病日群)に分けてそのCAL発生頻度を統計学的に解析した.CALは後遺症期の記載に基づき,拡大(Dil),瘤(ANm),巨大瘤(ANl)を選んだ.統計学的検討にはカイ二乗検定を用いた.【結果】投与開始病日別の患者数は第 5,第 4,第 6 病日の順で全体の77.7%を占めた.一方,1~4 病日群は 3,188例(全体の27.4%)で,Dil 2.32%,ANm 1.13%,ANl 0.50%,5~7 病日群は 7,712例(同66.3%)で,Dil 1.80%,ANm 0.56%,ANl 0.19%,8~10病日群は623例(同5.4%)で,Dil 3.69%,ANm 1.93%,ANl 0.0%であった.統計学的検討は後遺症なし例と後遺症あり(Dil + ANm + ANl)例に分けて各群間で検討した.1~4 病日群と 5~7 病日群の間と 5~7 病日群と 8~10病日群の間にはp < 0.0001の有意差が確認され,1~4 病日群と 8~10病日群の間には有意差はなかった(p = 0.059).【考察】今回の 2g/kg投与群においても過去の検討と同様に,第 1~4 病日投与群と第 5~7 病日投与群との間にCAL発生頻度に有意差が確認できた.早期投与を必要とする患者群は重症なのか,あるいは投与時期を遅らせればCAL発生頻度を抑えることができるかは不明であるが,投与病日を意識した治療計画が大切である.

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