II-P-144
川崎病重症度評価における血小板血管内皮細胞増殖因子の有用性
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児発達機能病態学分野1),血管代謝解析学分野2),鹿児島市医師会病院小児科3)
上野健太郎1),野村裕一1),益田君教3),橋口照人2),森田康子3),櫨木大祐1),江口太助1),河野嘉文1)

【背景】血管炎症部位では,血小板凝集に伴い血小板血管内皮細胞増殖因子(platelet vascular endothelial growth factor;platelet VEGF)が放出され血管新生を誘導する.巨核球や血小板は細胞質中にVEGFを豊富に含有しており,炎症部位における主要な放出源である.また放出されたVEGFは血液中を循環しFlt-1やKDRなど特異的受容体に結合するため,血漿より血清での測定が有用である.【目的】川崎病患児の治療前後におけるplatelet VEGFを比較し,冠動脈病変(coronary artery abnormalities;CAA)との関連性,γグロブリン大量療法(IVIG)への反応性(反応群,不応群)を比較検討した.【方法】川崎病患児80例(治療反応群69例,治療不応群11例),有熱性細菌性疾患26例(コントロール群)を対象とした.川崎病群ではIVIG前,IVIG後 5 日以内の血清VEGF,コントロール群では急性期治療前の血清VEGFを測定し血小板補正を行いplatelet VEGFを算出した.血清VEGFはELISA法を用いて測定した.【結果】川崎病群とコントロール群の比較では白血球数,CRP値に有意差はみられなかったが,川崎病治療前platelet VEGF(×10-8pg)(18.8 ± 11.1)はコントロール群治療前(8.1 ± 3.0)に比べて有意に高値であった.川崎病治療前platelet VEGFはIVIG反応群(17.8 ± 8.1)と比較して,不応群(25.2 ± 17.6)で高値であったが有意差はみられなかった.しかし不応群ではIVIG後も有意に高値が持続した(38.0 ± 16.5, p < 0.001).また治療前の血清VEGFとCAA z-score(発症 1 カ月間の最大値)との間に相関はみられなかったが,platelet VEGFとCAA z-scoreでは有意な正の相関(R = 0.524, p < 0.001) がみられた.CAAの比較では最大z-score > 3 群(27.5 ± 13.6)はz-score < 3 群(16.1 ± 6.9)に比較して有意に高値(p < 0.001)であった.【考察】Platelet VEGFは冠動脈病変に有意に相関しており,治療前後の値の変化はIVIG反応の予測に有用である可能性が示唆された.

閉じる