II-P-145
急性期にシェーグレン症候群を合併した川崎病の 1 例
大津赤十字病院小児科部
岩朝 徹,伴由布子,伴 伯彦,今井 剛,廣田常夫

【背景】川崎病は自己免疫疾患の一つと分類されているが,他の自己免疫疾患のように他の自己免疫疾患を合併したり高IgG血症を呈することはほとんど報告されておらず,合併した場合にどのような症状や経過に変化を生じるかは報告がない.【症例】7 歳女児.川崎病にて入院となったが,通常の川崎病ではあまり認めない眼球の痛み,口唇のヘルペス様の出血・凝血所見が目立ち,γグロブリン投与前にもかかわらずIgG 3,317mg/dl,AMY 897IU/lと異常高値であった.また入院以前より原因不明の弛張熱を反復していた.【経過】川崎病と診断後,アスピリンおよびγグロブリン 1g/kgの投与で速やかに解熱したにもかかわらず,CRP上昇を伴わない微熱,関節痛などが遷延し左冠動脈起始部にø = 7mmの瘤を形成した.アスピリン投与での外来フォロー中に関節痛・目や耳下腺部の痛み,口唇のあれなどが継続していた.各種自己抗体検査の結果抗SS-A,SS-B抗体・リウマチ因子高値であり,唾液腺生検からシェーグレン症候群と確定診断した.左冠動脈の瘤は経過中退縮し,半年後の冠動脈造影では瘤は消失していた.【考察】川崎病に自己免疫疾患,特にシェーグレン症候群を合併した例の報告はこれまでにほとんどみられない.合併した場合本症例のように非典型的な経過を示し得る.また高IgG血症が発症時より存在しており,γグロブリン大量療法が施行しづらい.【結論】川崎病にシェーグレン症候群を合併した場合,粘膜病変が重度になり得る.高IgG血症を伴っていてもγグロブリン大量療法は有効であるが,過粘調症候群に留意が必要であり,また解熱経過が良好でも瘤を形成し得るため,その治療の選択や経過観察には慎重な対応が必要である.

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