II-P-146
川崎病既往例における冠動脈瘤合併例と冠動脈一過性拡大例の大動脈弾性特性の検討
秋田大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野
小山田遵,豊野学朋,島田俊亮,岡崎三枝子,田村真通

【背景】川崎病は乳幼児に好発する原因不明の急性熱性疾患で全身の血管炎を特徴とする.近年,川崎病既往と動脈硬化の危険性との関連性が報告されてきている.今回われわれは,川崎病既往例で冠動脈瘤合併例と非合併例において,弾性血管である大動脈の動脈硬化性変化の指標として大動脈弾性特性を検討し比較した.【対象】川崎病既往のある25例(冠動脈瘤を合併した 8 例;A群,急性期に冠動脈一過性拡大を認めたが冠動脈瘤を合併しなかった17例;B群)と正常群16例(C群).【方法】二次元経胸壁心エコーにて大動脈収縮期径係数(AoSI;mm/m2),大動脈拡張期径係数(AoDI;mm/m2),左室拡張末期径係数(LVEDI;mm/m2),左室短縮率(LVFS;%)を計測した.大動脈弾性特性の指標として,収縮期大動脈径,拡張期大動脈径,非観血的動脈圧を用いてaortic stiffness index(ASI),aortic distensibility(AD;cm2/dyne×10-4),aortic strain(AS;%)を算出した.【結果】3 群間において年齢,体表面積,収縮期血圧,拡張期血圧,AoSI,AoDI,LVFSに有意差を認めなかった.A群はC群に比して脈圧が有意に高値であった.ASIはA群がB,C群に比して有意に高値,またADはA群がB,C群に比して有意に低値であった.ASはA群がC群に比して有意に低値であった(すべてp < 0.05).B群はC群に比してASIが高く,ADまたASが低い傾向を認めたが,B,C群間においてはそれぞれ有意差を認めなかった.【結論】川崎病既往例において,大動脈弾性特性は冠動脈瘤合併例でのみ有意に低下しており,冠動脈一過性拡大例では有意な変化を認めなかった.本検討で得られた結果は,冠動脈瘤合併例においては冠動脈のみならず大動脈弾性特性に関しても注意深いフォローが必要であることを示唆する.

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