II-P-147
ファロー極型根治術後の心筋梗塞に対し,ニトロプルッシドの長期使用により冠側副血行路の発育と心機能改善が認められた 2 歳女児の 1 例
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児循環器科1),小児心臓血管外科2)
加藤温子1),中矢代真美1),天久憲治1),我那覇仁1),長田信洋2),西岡雅彦2),越田嘉尚2)

【はじめに】成人の虚血性心疾患の治療成績は外科的治療およびカテーテル治療の発展により,近年著しく改善しているが,幼児の先天性心疾患術後の虚血性心疾患は症例も少なく,治療の報告はほとんどない.今回われわれはファロー極型根治術後の心筋虚血による慢性重症心不全に対し,ニトロプルッシドの長期投与を行い,心機能の改善を認めた症例を経験したので報告する.【症例】2 歳11カ月女児:ファロー極型に対し,BTシャント(4 カ月),Rastelli術(1 歳 9 カ月)施行.根治術 3 カ月後に著明な心機能低下を認め,その 2 カ月後に心原性ショックを来し,人工呼吸管理のうえ,強心剤,ミルリノン,ニトロプルッシド持続静注を開始した.心臓カテーテル検査にてLAD完全閉塞を認め,心筋シンチでは安静時LVEF 18%,LVIDd 77mlであり,CABG(LIMA-LAD吻合)を施行した(2 歳 2 カ月).しかし術後も心機能改善せず,冠動脈造影にて吻合部閉塞を認めたが,経皮的バルーン拡張術は不可能であった.そのため,ニトロプルッシドおよびミルリノンの静注,利尿薬,カプトプリル,カルベジロール内服を行った.2 歳 8 カ月時に経皮的亜硝酸薬の投与を試み,静注薬を中止したが,急性心筋梗塞様の所見を認めたためミルリノン,ニトロプルッシド持続静注を再開した.2 歳 9 カ月時の心筋シンチではEF 38%, LVIDd 64mlと改善を認めており,またLAD領域の壁運動も改善していることが確認された.現在主な合併症はなく,全身状態は良好で,今後冠動脈の評価を行う予定である.【考察・結語】乳幼児の先天性心疾患術後の冠動脈閉塞による心筋梗塞に対し,血行再建術が困難である場合の内科的治療に関する報告は極めて少ない.亜硝酸薬は前負荷軽減と冠動脈および側副血行路拡張作用を有するが,本症例ではその長期投与が心筋虚血と心不全の改善に寄与したと考えられた.

閉じる