II-P-153
ウリナスタチン先行療法は川崎病γグロブリン不応例の冠動脈合併症を著しく低下させる
防衛医科大学校小児科1),自衛隊中央病院小児科2),茨城大学教育学部3)
金井貴志1),滝沢真理1),川村陽一2),佐藤正規1),千田礼子1),黒川貴幸1),石渡隆寛1),西山光則1),竹下誠一郎3),浅野 優1),野々山恵章1)

【背景】川崎病治療の問題点として,γグロブリン(以下γ)不応例の高率な冠動脈合併症がある.一般的には好中球エラスターゼ阻害薬であるウリナスタチン(以下UTI)はγ投与後の不応例に初めて使用する傾向があるが,UTIの作用機序を考慮すれば病初期での投与がより有効である可能性がある.当院では本症の治療としてUTIを診断時から直ちに使用するUTI先行投与療法を施行し良好な成績を収めている.【目的】今回われわれはUTI先行投与療法が,γ不応例の冠動脈病変合併を減少させることができるか検討した.【方法】当院に1998年10月~2008年12月に入院した川崎病のうち,診断時からUTI 5,000U/kgを 1 日 3 回炎症鎮静化まで投与し,原田スコアを参考にγを併用した319例を対象とした.γ不応例での追加治療の方針はγ追加とUTI 6 回投与に増量することを基本とし,さらに症例に応じてプレドニン(以下PSL)追加を行うものとした.γ単回投与にて解熱した281例をA群とし, 1 回目終了後48時間以内に解熱がみられず追加投与した38例をB群とし心合併症を中心に後方視的に検討した.【結果】B群はA群より有熱期間が長い傾向を認めた.B群38例のうち,γ追加と同時にUTIを増量したのは32例,PSL追加を要したのは19例であった.γ不応率は11.9%で全国調査結果と明らかな優位を認めなかったが,冠動脈合併症はA・B両群合わせたγ使用例全体で一過性拡大以上の病変(以下CAL)が10/319(3.1%),冠動脈瘤(以下AN)3/319(0.94%)であり,B群内ではCAL9/38(23.7%),AN3/38(7.9%)であった.ANも巨大瘤は認めずいずれも小~中等瘤であった.【考察】γ投与における不応率は明らかな改善なく,PSLを含む追加治療を必要とする症例も存在する.しかし他施設のγ不応例の報告ではANは13~45%にみられるのに対して当院では38例中 3 例のみであった.【結論】ウリナスタチン先行療法は川崎病γグロブリン不応例の冠動脈合併症を著しく低下させる.

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