II-P-155
骨髄移植後の免疫抑制療法中に冠攣縮性狭心症を発症した 1 例
東北大学医学部小児科
川合英一郎,柿崎周平,大野忠行

【背景】冠攣縮性狭心症は小児での報告は極めて少ない.今回,骨髄移植後の免疫抑制療法中に冠攣縮性狭心症を来した症例を経験したので報告する.【症例】8 歳女児.6 歳時に急性骨髄性白血病を発症し化学療法にて寛解したが,8 歳時に再発し2008年 6 月 3 日に骨髄移植を行った.以降GVHDに対して免疫抑制療法を行っていた.父方曾祖父とその兄弟に狭心症あり.【現病歴】2008年12月21日午後より腹痛,胸痛の訴え,酸素化不良,アシドーシスの進行があり.心エコーでEF 25%と心機能の低下あり,心電図ではV4~V6に著明なST低下を認めた.DOA,DOB,オルプリノン,利尿剤にて心不全治療を開始し,翌日にはEF 44%へ回復.症状の改善とともに心電図所見も改善し12月27日には循環作動薬は中止した.しかし,2009年 1 月 8 日より心嚢液貯留,1 月11日夜より再び胸痛の訴えあり,ニトログリセリン,オルプリノンを開始するも,1 月12日に酸素化不良,心機能低下,ST変化が出現したためICUにて心不全治療,血管拡張剤での治療を開始した.1 月14日に心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影では器質的狭窄,閉塞はみられなかったが,冠動脈のアセチルコリン負荷試験では冠動脈の攣縮と心電図でのST変化を認めた.臨床経過,カテーテル検査所見より冠攣縮性狭心症と診断しジルチアゼムを追加投与開始した.投薬開始後は腹痛,胸痛などの症状はなく,心機能は正常化し経過している.【結語】小児において冠攣縮性狭心症を発症した症例を経験した.10歳未満での狭心症の報告はほとんどないため報告する.今後も心機能についても注意深く経過を見ていく必要があると考えられた.

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