II-P-157
血管炎バイオマーカーPTX3の川崎病への応用の有用性
日本医科大学小児科
勝部康弘,阿部正徳,上砂光裕,深澤隆治,小川俊一

【背景】ペントラキシン3(PTX3)は炎症刺激により局所で産生され,血管関連ペントラキシンと呼ばれている.最近この血管炎のバイオマーカーであるPTX3を用い血管病変を評価しようとする試みが行われ,血管病変の早期発見,重症度評価,予後評価など多方面にわたりその応用が試みられている.【目的】(1)川崎病におけるPTX3値の検討.(2)PTX3による川崎病のガンマグロブリン(IVIG)不応例予測の可能性を探る.(3)PTX3値のIVIG治療による変動の検討.(4)PTX3値の回復期における値の検討.(5)冠動脈病変(CAL)合併の予測マーカーとしての可能性の検討.【方法】対象は川崎病30例.IVIGは全例 2g/kg.採血はIVIG投与前,終了 2~3 日後,発症 1 カ月後,3 カ月後,6 カ月後に行った.年齢一致正常コントロールは 6 名.【結果】(1)IVIG治療前のPTX3値(平均値)は22.5ng/mlでコントロール(3.6)より有意に高値を示した(p < 0.05).(2)PTX3値は小林らのIVIG不王例予測スコアとは正の相関を示した(r = 0.664,p = 0.000).(3)PTX3値はIVIG後(14.5)有意に低下した(p < 0.05).(4)IVIG後 1 カ月,3 カ月,6 カ月のPTX3値はそれぞれ,8.3,4.5,3.9ng/mlであり,1 カ月後はコントロールより有意に高値を示した(p < 0.05).(5)CAL合併例のPTX3値は62.5ng/mlで著しく高値を示した.【まとめ】(1)川崎病急性期においてPTX3は著しく高値を示した.(2)PTX3は小林らのIVIG不応例予測スコアと正の相関を示し,不応例予測バイオマーカーとしての可能性が示唆された.(3)PTX3 はIVIGにより速やかに低下した.(4)回復期少なくとも発症 1 カ月間PTX3は高値を示しており,血管の炎症が持続している可能性が示唆された.(5)CAL合併例のPTX3は高値を示しており,CAL合併予測マーカーとしての可能性も示唆された.

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