II-P-158
右室―冠動脈瘻を伴った純型肺動脈閉鎖症に対する新術式—右室減圧を伴ったFontan手術—
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科学1),岡山大学病院循環器疾患集中治療部2)
川畑拓也1),笠原真悟1),新井禎彦1),赤木禎治2),宮原義典1),小谷恭弘1),佐野俊二1)

【はじめに】純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)に対するFontan手術の遠隔成績は不良である.その主な原因として,高圧右室を原因とする不整脈やRV-coronary fistulaによる心筋虚血等が挙げられ,高圧右室の扱いがFontan術後遠隔成績に影響を与えると考えられる.しかし,major RV-coronary fistulaを有する症例では,急激な右室の減圧は心筋虚血を誘発する危険性がある.今回,major RV-coronary fistulaを有するPA/IVS症例に対し,段階的右室減圧によるFontanを行う新しい術式を導入し,良好な結果を得たので報告する.【症例】妊娠39週 1 日,2,310gにて出生.出生後PA/IVSと診断され,PGE1投与下に当院転院.生後 1 カ月時にカテーテル検査を施行されmajor RV-coronary fistulaを指摘されたため,右室/左室圧比(RV/LV)を0.8以上に保つよう経度減圧を目的としたBTシャントおよび肺動脈弁切開術を左開胸下に施行.術後半年時のカテーテル検査では,RV/LV = 2.2, major RV-coronary fistulaは残存していた.さらなる右室減圧を目的に,1 歳時に両方向性グレン手術およびRV overhaul(肺動脈弁切開,右室流出路心筋切除)を施行.2 歳11カ月時のカテーテル検査で,RV/LV = 1.5,major RV-coronary fistulaは減少していた.RV size = 34 % of Normal, TV size = 36% of Normalであり,Fontan手術の適応と判断された.3 歳 2 カ月時にTCPC およびさらなる減圧を目的とした右室流出路再形成術を施行した.術後 1 年半時のカテーテル検査ではRV/LV = 0.65, major RV-coronary fistulaは消失し,LVEF = 84%と左心機能も良好であった.【考察】Major RV-coronary fistulaを有するPA/IVS症例に対し,段階的に右室圧を減少させることにより心筋虚血を誘発することなく,右室を減圧した状態でFontan手術を施行することが可能であった.高圧右室を残さない本術式は,PA/IVSに対するFontan手術の遠隔成績を改善させる可能性がある.

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