II-P-161
右室心尖部小切開による乳児期心尖部筋性VSDの閉鎖
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部心臓血管外科学1),小児医学2)
元木達夫1),北市 隆1),吉田 誉1),神原 保1),黒部裕嗣1),浦田将久1),阪田美穂2),井上美紀2),早渕康信2),北川哲也1)

【背景と目的】心尖部筋性VSDに対する外科治療は,“primary closureか肺動脈絞扼術か?”,あるいは“sutureless techniqueか心尖部小切開アプローチか?”といまだ議論が多い.われわれはMichigan大学Bove ELの成績から左室心尖部に限局した小切開アプローチが有効で遠隔予後を悪くするものではないことを報告してきた.今回,その延長線上で,Stellin G等の報告をした(ATS 2000;69:597–601)右室心尖部小切開アプローチによる心尖部筋性VSDの閉鎖を経験したので報告する.【症例】日齢55,体重2,866gの女児.Perimembranous VSDとapical muscular VSD,PFO,severe PH(RVp = 80~90% of LVp).日齢36より人工呼吸管理を要し,抜管困難な状態であった.【手術】右房切開から三尖弁の前乳頭筋を牽引し,右室心尖部自由壁から起始する前乳頭筋の起始部を心外膜側から確認した.左前下行枝と確認した三尖弁前乳頭筋起始部との間の右室心尖部に約10mmの小切開をおき,moderator bandから前乳頭筋へのルートを観察し,それらを損傷せぬように,より心尖部側にある粗な肉柱を丁寧に切離するとapical VSDの辺縁が明らかとなった.これを PTFE patchを用いて6-0 monofilament sutureの連続縫合にて閉鎖した. 続いてperimembranous VSD閉鎖後,右室心尖部切開部は,LADを損傷せぬように丁寧に閉鎖した.【結果】術後 1 年の心エコー,心カテーテル検査では.極少量の遺残短絡が認められたが,右心系のO2ステップアップは認めず,RVp/LVp = 0.21,心室機能も正常に保たれていた.【考察】肺動脈絞扼術は右室の錯綜した肉柱部をより複雑に肥大させ,かえって外科治療を困難にする観点から乳児期primary repairが望ましいと思われる.そのような条件下で右室心尖部小切開による閉鎖法は考慮すべき方法と考えられた.

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