II-P-162
21トリソミーに対する肺動脈絞扼手術の臨床的検討
聖隷浜松病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
渡邊一正1),小出昌秋1),國井佳文1),新垣正美1),渕上 泰1),武田 紹2),中嶌八隅2)

【目的】今回われわれは21トリソミーに対する肺動脈絞扼手術(PAB)術後の臨床的データとその意義に関して検討した.【対象】1999年 7 月~2009年 1 月に当院でPABを行った21トリソミー28例をD群(うち生後60日以内19例をE群,60日以降 9 例をL群)とし,対照群として21トリソミー以外のPAB症例34例をN群とした.疾患は二心室修復適応のVSD,AVSD,DORV,CoA or IAA complexとした.【方法】手術時年齢と体重,退院時心エコーでのPAB最大流速(max V.),心内修復術前心カテの肺血管抵抗(Rp),Qp/Qs,平均肺動脈圧(PAP),右室―肺動脈間圧較差(RV-PA PG),SaO2について検討した.【結果】手術時年齢,BWはD群:56 ± 52日,3323 ± 968g,N群:49 ± 47日,3,225 ± 877gで有意差はなかった.Max V.はD群3.7 ± 0.4 m/sec.,N群4.1 ± 0.4m/sec.(p = 0.04),RpはD群3.2 ± 1.1U・m2,N群2.2 ± 0.9U・m2(p < 0.01),PAPはD群21.8 ± 6.5mmHg,N群 18.1 ± 6.1mmHg (p = 0.04),RV-PA PGはD群41.7 ± 13.8mmHg,N群55.3 ± 13.2mmHg(p < 0.01),SaO2はD群87.1 ± 7.7%,N群90.6 ± 4.3%(p = 0.05)とそれぞれ有意差を認め,D群ではPABがやや緩くRp,PAPが高めの傾向にあった.E群とL群の比較ではmax V.:E群3.8 ± 0.4m/sec.,L群3.5m/sec.(p = 0.04),Qp/Qs:E群1.07 ± 0.32,L群1.43 ± 0.34(p = 0.03),SaO2:E群85 ± 8.0%,L群91.7 ± 4.9%(p = 0.05)で有意差を認め,E群のほうがよりPABがきつい傾向にあった.Rp(E群:3.3 ± 1.1U・m2,L群:3.1 ± 1.0U・m2),PAP(E群:21.7 ± 6.8mmHg,L群:22.0 ± 6.4mmHg),RV-PA PG(E群:41.6 ± 14.6mmHg,L群:41.9 ± 13.1mmHg)に有意差はなかった.【考察】D群は同じ時期にPABを行ってもPABがやや緩くN群よりRpが高めの傾向にあり,21トリソミーの肺血管病変を反映していると考えられた.しかしD群においてもRpは心内修復術に問題のないレベルであった.D群内でのPAB時期の比較では時期が早いほうがよりPABが強めになっていたが,根治手術前のRpには反映されていなかった.

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