II-P-163
弓部低形成を伴う大動脈縮窄/離断症候群に対する拡大大動脈弓再建術
富山大学医学部第一外科1),小児科2)
芳村直樹1),松久弘典1),日隈智憲1),大高慎吾1),青木正哉1),廣野恵一2),渡辺一洋2),渡辺綾佳2),上勢敬一郎2),市田蕗子2),三崎拓郎1)

【目的】弓部低形成を伴う大動脈縮窄(CoA)/離断(IAA)症候群に対して大動脈弓再建術を行う際には可及的中枢側まで吻合口を拡大する必要があるが,弓部分枝の形態によっては,再建困難な症例も少なからず存在する.当院における拡大大動脈弓再建術(EAAA)の成績について検討した.【対象】2005年 4 月以降に手術が施行された弓部低形成を伴うCoA/IAA症候群 7 例.手術時日齢 2~13(平均6.9)日,体重1.7~3.2(平均2.7)kg.CoA 6,IAA 1 例.合併心疾患は多発性心室中隔欠損(mVSD)3,単心室(SV)2,僧帽弁閉鎖(MA),三尖弁閉鎖(TA)各 1 例.左第 3 肋間開胸にて上行~弓部 3 分枝~下行大動脈(Ao)を十分に剥離.腕頭動脈―左総頸動脈(CCA)間の弓部および下行Aoを遮断,動脈管組織を切除後,大動脈弓小彎側を可及的中枢(できれば上行Ao)まで切開し,下行Aoと吻合した.腕頭動脈が末梢寄りで分枝し,上行Aoまで切開できなかった 3 例には左CCA―左鎖骨下動脈(SCA)側々吻合を追加した.全例肺動脈絞扼術を施行.【成績】[手術成績]手術死亡なし.EAAA直後から下肢圧が低値を示した 1 例に左CCA―左SCA側々吻合を追加し,上下肢圧差は消失.TA(IIIB)の症例が,前上方に移動した下行Aoと後方から起始していた左肺動脈に挟まれ左主気管支狭窄を生じて抜管困難となり,下行Ao後方吊り上げ術により抜管に成功.2 例に横隔神経麻痺発症.[遠隔成績]1 例がRSウイルス感染にて突然死.2 例に再狭窄が生じ,バルーン拡大にて軽快.TAの症例が,左肺低換気によると思われる左肺高血圧を生じ,11カ月時にBDG + intrapulmonary artery septationを施行.現在TCPC評価待ち.SVの 2 例はTCPC終了.mVSDの 3 例中 1 例は根治術終了,2 例は待機中.【まとめ】(1)弓部低形成を伴う大動脈縮窄・離断症候群 7 例にEAAAを行った.(2)可及的中枢側まで吻合口を拡大した結果,1 例に左主気管支狭窄を発症した.(3)上行Aoまで吻合口を拡大できない症例には左CCA―左SCA側々吻合が有効であった.

閉じる