II-P-165
重症Ebstein奇形に対する修復術—適応術式の個別化の重要性—
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児・先天性心臓血管外科1),小児手術・集中治療部2)
河田政明1),立石篤史1),大塚洋司2),岡田 修2),多賀直行2),竹内 護2)

【はじめに】高度TRを伴う重症Ebstein奇形は右室機能低下だけでなく左心系への圧排も心不全の増悪を招来する.こうした例では三尖弁,右房・右室,左心系機能すべてを考慮し,多彩な病変に応じた個別の術式適応が重要と考え,残存中隔尖/後尖を本来の三尖弁輪位に移動,前乳頭筋の授動にてより良好な弁接合,逆流制御を得たうえで,前壁を含む右室の縫縮形成を加え,さらに必要時,BDG吻合も併用している.【症例と術式】【症例 1】9 歳,女児.RVEDV 332%Nの機能低下右室を合併.三尖弁形成は上記のほか,前尖逸脱を人工腱索で制御,Cosgrove bandにて補強した.右室縫縮は前壁縫縮も追加した.【症例 2】2 歳,女児.RVEDV 260%N.三尖弁形成は二弁口化を加え,右室前壁の縫縮とBDG吻合を追加した.【症例 3】43歳,女性.異常前尖組織を用いた二弁口化を併用後Cosgrove bandによる補強を行った.いずれの例でも右房縫縮を追加,人工弁輪装着例では三尖弁輪部への凍結凝固も追加した.【結果】心拡大は著明に減少し,三尖弁機能もいずれも良好であった.自覚症状・運動能も改善し,有意の不整脈はみられていない.【考察とまとめ】多彩な三尖弁形態を示す本疾患では従来のCarpentier法,Danielson法など単独では逆流の制御が困難であったり,右室機能・左室機能への問題が残る例もみられた.特に,本来の三尖弁輪位への中隔尖・後尖の授動・再縫着はよりよい弁接合をもたらした.高度に拡大した右室例でのtetheringによる弁接合障害に対する前乳頭筋の授動は弁機能改善に有用であった.さらに右室機能改善,左室機能への悪影響軽減には下壁だけでなく,右室前壁の縫縮も有益である.高度TRを合併するEbstein奇形に対する修復術時には病変・病態に応じ,多様な手技を複合した個別化した術式の適用が重要である.

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