II-P-166
無脾症候群に対する心外導管型Fontan術後に発症した肺静脈狭窄(PVO)に対する 1 手術例
九州厚生年金病院心臓血管外科
梶原 隆,井本 浩,落合由恵,坂本真人,岩井敏郎,柳瀬 豪,瀬瀬 顯

【症例】完全型心内膜欠損症,両大血管右室起始症,肺動脈狭窄症, 無脾症候群の診断にて生後 4 カ月時にRt. mB-T shunt(4.0mm Gore-Tex graft)施行.7 カ月時にbidirectional Glenn + CAVV plasty施行,2 歳 8 カ月時に心外導管型Fontan手術(TCPC, 16mm Gore-Tex)施行.Fontan術後 3 カ月目に全身浮腫および肝腫大を認め,再入院となった.入院時に著明な胸水,腹水貯留,蛋白漏出性胃腸症による低蛋白血症を認めた.経胸壁心エコーにてPV flowの上昇(2.21m/s),心臓カテーテル検査では,左右肺動脈圧の上昇(19~21mmHg)を認め,左右肺静脈はcommon chamberを形成した後,左房に流入しており,開口部に狭窄を認めた.手術は上行大動脈送血,人工血管から 2 本脱血にて人工心肺確立し,PVO解除術施行した.術中所見にてPV orificeは左右PVが合流して一つになっており,開口部の口径は 4~5mmと狭窄していた.狭窄部はmyxomatousな組織とその外側のfibrosisで形成されており,肺静脈壁が現れるまで十分に切除を行い狭窄解除した.人工血管が肺静脈を圧迫している所見はなかった.術後心エコー検査にてPV flowは1.1m/sまで低下したが,肺静脈の還流形態から再狭窄予防としてステロイド内服を行い,現在PVO解除術後 5 カ月が経過し,経過観察中である.【考察】今回,発症したPVOは無脾症候群に伴う肺静脈還流異常によるものがFontan術後に顕在化したものと考えられた.【結語】肺静脈還流異常を合併した無脾症候群に対するFontan術後に発症したPVO に対する 1 手術例を経験した.無脾症候群には肺静脈還流異常が高率に合併することが知られており,Fontan術後にはFontan循環に破綻を来すPVOの発症に注意が必要であると考えられた.

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