II-P-167
高度僧帽弁逆流を伴う成人期房室中隔欠損症に対する僧帽弁形成術の 3 例
横浜市立大学外科治療学心臓血管外科
長 知樹,南 智行,磯松幸尚,益田宗孝

【背景・目的】本邦における成人期先天性心疾患に対する医療体制の確立の遅れにより適切な時期に診断・治療法をされない症例への対応が問題となっている.今回われわれは高度僧帽弁逆流により心不全を来した成人期房室中隔欠損症 3 例を経験したので若干の考察を加えて報告する.【症例 1】28歳男性.2 歳時に完全型房室中隔欠損症根治術を施行.28歳時易疲労感を主訴に近医受診.完全型房室中隔欠損症術後MR(前尖cleft閉鎖不全),PH,心房細動と診断.僧帽弁形成術(cleft閉鎖,弁輪縫縮術Kay法)を施行した.【症例 2】59歳女性.突然の呼吸苦出現し肺水腫で入院.不完全型房室中隔欠損症,severe MR(腱索断裂 + cleft),PHと診断.CAGでRCA#1に狭窄を認めた.僧帽弁形成術(cleft閉鎖,人工腱索再建,弁輪縫縮術Kay法),三尖弁形成術,ASD自己心膜パッチ閉鎖,CABG1枝(Ao-SVG-#2)を施行した.【症例 3】61歳女性.60歳時に労作時呼吸苦主訴に近医受診.心エコーでsevere MR,不完全型房室中隔欠損症,severe TR,ASD(二次口欠損),心房細動の診断.ASD閉鎖,僧帽弁形成術(cleft閉鎖,僧帽弁輪縫縮(half annuloplasty ring)),三尖弁形成術を施行した.【考察】成人期先天性心疾患に対する管理治療体制はいまだ不十分で病態が増悪するまで放置されることがまれではない.われわれの症例でも心房細動,三尖弁逆流,冠動脈疾患の合併を認めており早期の診断体制の確立が望まれた.成人における僧帽弁形成術ではannuloplasty ringを用いた弁輪縫縮術が標準となっているが,房室中隔欠損症では伝導路が正常心と異なるため僧帽弁輪縫縮の際の弁輪への外科的アプローチについても今後検討する必要があると考えられた.

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