II-P-168
Fenestrated Rastelli手術 3 例の経験
社会保険中京病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
櫻井 一1),加藤紀之1),野中利通1),杉浦純也1),波多野友紀1),野田 怜1),松島正氣2),大橋直樹2),西川 浩2),久保田勤也2),吉田修一朗2)

【目的】過去15年間に当院でRastelli手術(R)を施行した64例中 3 例にVSD patchにfenestration(F)作成を要した.Fenestrated Rastelli(FR)の報告は少なく,その術前後の経過を検討し報告する.【症例 1】TGA(III).前医で左PA欠損と診断されたが低形成のPAが存在し,6 歳時左BTS,8 歳時PA形成,central shunt,11歳時FR施行.半年後F閉鎖.14歳時PLEを発症し,AVR,RV縫縮,弁付きpatchによるASD作成.術後は長期の肝うっ血による肝機能障害が残存.【症例 2】TF,PA,MAPCA.3 歳時右UF,4 歳時左UF,その後shunt閉塞のためAP window作成.PAI = 131で 6 歳時R施行したが,oversystemic RVPのためFを追加して終了.術後RVP/ABP = 0.79.拡張期にRL短絡を認め,SpO2は90台前半.【症例 3】TF,PA,MAPCA.PAI = 62.2 カ月時central shunt,1 歳時左UF,2 歳時右UF,4 歳時R施行.RVP/ABP = 0.75で終了.術後心不全が強く,心カテでRVP/ABP = 1.28,O2投与で0.89.1 カ月後F作成.術後RVP/ABP = 0.89.Fのshuntは両方向性.SpO2は90台前半で,在宅O2療法施行中.【結果】FRは術中高RVPへの対処,術後急性期の右心不全の改善には有効であったが,長期的なQOLは良好とはいえなかった.これには術前心機能,肺動脈の発育度,術後の高CVPが関与していると思われる.【考察と結語】FRは術前より心内動静脈血の流れの効率は改善しSO2の改善につながるが,Fが大きすぎると拡張期に肺へ流れない分逆にSO2低下したりする可能性があり,小さすぎればRV後負荷がとりきれずCVPが下がらず,成長とともに再悪化しやすいなどの可能性があり得,Fの適切な大きさの判断は困難である.今後は診断能力の向上,乳児期早期からの手術介入で対象症例は少なくなると思われるが,より良い条件(PAI,PA segment数)でRにもっていくことが最も重要である.またR術中は少しでも低いRVPを得るため心嚢内で肺動脈圧較差を残さないようにとくに注意する必要があると思われた.

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