II-P-170
肺動脈弁逆流を伴う大血管転位症(II)に対して肺動脈絞扼術を行い結果的にJatene手術に到達した 1 手術例
あいち小児保健医療総合センター心臓外科1),循環器科2)
鵜飼知彦1),前田正信1),村山弘臣1),長谷川広樹1),藤井玄洋1),安田東始哲2),福見大地2),沼口 敦2),足達武憲2)

【背景】肺動脈弁逆流を伴う大血管転位症に対する外科的治療法は心房内血流転換術を選択せざるを得ないが,乳児期施行例では術後体肺静脈狭窄などのため十分満足できる成績には至っていない.同症に対して肺動脈絞扼術を行い結果的にJatene手術に到達した症例を経験したので報告する.【症例】9 カ月の男児.主訴はチアノーゼ.生後,大血管転位症(II),中等度肺動脈弁逆流症,肺動脈弁低形成と診断され肺動脈の拡張も認めた.心房内血流転換術の適応と判断し経皮的心房中隔形成術施行後,1 カ月時に肺動脈絞扼術{周径(mm) = 体重 + 22}と動脈管結紮術を施行した.3 カ月時に退院するも,1 週間で上気道炎,低酸素血症にて再入院.5 カ月時の心臓カテーテル検査にて肺動脈弁は低形成のままだが逆流は減少していたため,乳児期の心房内血流転換術よりは新大動脈弁逆流がある程度残存しても大血管血流転換術の方が予後が良いと判断した.根治術待機中の 7 カ月時,RSウィルス性肺炎に罹患.人工呼吸管理を行うも治療に難渋.緑膿菌性肺炎,肺出血も合併し低酸素血症から心機能低下を来した.体外膜型人工肺(ECMO)による肺炎の治療を行いながら,1 週間後にVSD閉鎖,Jatene手術を施行しECMOの離脱が可能となった.術後肺高血圧発作のため一酸化窒素吸入治療を必要としたが,第 8 病日に人工呼吸管理より離脱.新大動脈弁逆流はtrivialで経過良好であった.【考察】当初,心房内血流転換術に向け時間を稼ぐ目的で行った肺動脈絞扼術であったが,肺動脈弁の低形成の程度が軽かったため結果的に肺動脈絞扼術がsino-tubular junctionを絞めて肺動脈弁のcoaptationを改善しJatene手術に到達できた. 【まとめ】肺動脈弁逆流を伴う大血管転位症(II)に対して肺動脈絞扼術を行い結果的にJatene手術に到達し良好な結果が得られたため報告する.今後の新大動脈弁逆流の十分なフォローは必要であると思われる.

閉じる