II-P-173
心外膜側に起源を有し,カテーテルアブレーションが無効であった小児特発性心室頻拍に対して心筋切除術を施行した 1 治験例
聖隷浜松病院心臓血管外科1),聖路加国際病院心臓血管外科2)
渕上 泰1),小出昌秋1),國井佳文1),渡邊一正1),新垣正美1),渡辺 直2)

【はじめに】器質的心疾患のない特発性心室頻拍(VT)において,カテーテルアブレーションの成功率は高く,安全性も高い.しかし,心外膜側に起源を有する場合は無効であることが多い.今回,われわれは失神にて発症した小児特発性持続性VTで,薬物療法・カテーテルアブレーションが無効であり,右室心外膜側が起源と考えられた症例に対して心筋切除術を施行し,良好な結果を得たので報告する.【症例】14歳男児.患児は生来健康.心電図健診でも異常を指摘されたことはなかった.一卵性双生児の兄に特記すべき既往なし.ある日突然の動悸を自覚し,運動にて失神発作を起こし,当院受診.持続するVTにて入院となった.薬物療法にて改善なく,電気生理学的検査にて起源は右室流出路前壁と診断したが,アブレーションは不成功に終わった.他院でも再度アブレーション試行したが成功せず,心外膜側の構造物由来が疑われた.VT波型が継続し,運動負荷にて眩暈生じるため,手術の方針とした.【手術】術中マッピングにて右室流入路と流出路の間,右冠動脈に近接して円錐枝と右室枝の間に最早期興奮部位を同定した.右冠動脈本幹に近接しているため,右冠動脈を剥離テーピングして右房側によけたうえで,体外循環心停止下に同部位の心筋を全層性に切除し,クライオアブレーションを追加した後にパッチ閉鎖した.イソプロテレノール負荷にてVTが誘発されないことを確認し,手術終了とした.【結果】術後経過は良好であり,術後は洞調律を維持し,運動負荷試験においてもVT出現せず,自覚症状もなく経過.切除部位は病理にて領域を持った線維化とリポフスチンの沈着があり,心筋細胞の脱落が示唆された.【考察】器質的な心疾患がなく心外膜側に起源を有する小児期心室頻拍はまれであり外科的心筋切除が有効であった.

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