II-P-175
先天性心疾患術後遠隔期にCRT-Dを移植した 3 例の検討
近畿大学医学部心臓血管外科
藤井公輔,佐賀俊彦,北山仁士,中本 進,金田敏夫,川崎 寛,鷹羽淨顕,井村正人,西野貴子,湯上晋太郎

【背景】開心術の手術成績が向上し,術後遠隔期の心不全や不整脈が問題となってきている.当施設では開心術術後の心不全・不整脈治療を目的とし,11例にCRTを移植した.先天性心疾患の開心手術後の症例は 3 例ですべてCRT-Dの移植であった.【目的】先天性心疾患術後成人期にCRT-Dを移植した 3 例の患者背景,移植後の経過からCRT-Dの有効性を検討した.【症例】〈症例 1〉33歳男性,CTGA, VSD,Ebstein奇形,右室瘤のため,VSD閉鎖,三尖弁置換術,心室瘤切除術など計 4 回の開心術の既往がある.初回手術より29年の経過しNYHA 4 度の機能的左室不全を発症した.Af,PVCの連発を認めた.32歳時に経静脈的にCRT-Dを移植した.RVEFは20.9%から29.9%に改善,心不全の改善(NYHA 4→2),洞調律への復帰とBNPの減少を認めた.〈症例 2〉22女性.TOFのため右室流出路再建術,BCPSなど 3 回の開心術の既往を持つ.初回手術時から20年の経過後,意識消失を伴うVTを発症.VTの起源と考えられる右室瘤切除と心筋切除部周囲のablationと同時にCRT-Dの移植を行った.術後VTは認められなくなり,外来通院されている.〈症例 3〉50歳男性.ASD,MR,TRのため 2 回の開心術既往がある.初回手術時から20年経過後,左心不全を認めるようになった.Af,VTを確認した.CRT-D移植後EF 11.1%から18.6%に改善,洞調律へ復帰,心不全の改善(NYHA 3 → 2),BNPの減少を認めた.【考察】初回開心術から遠隔期の心不全やVTが原因でCRT-Dの移植を行った.先天性心疾患の場合,複数回にわたる心臓手術を必要とすることがあり,開心術後遠隔期に達した症例が今後も増え,CRTの適応症例も増加することが予想される.【まとめ】CRT移植は低侵襲でありCRTを効果的に使用することで遠隔期の心不全・不整脈治療を行うことができる.

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