II-P-176
ステロイド溶出心筋リードによる小児心臓ペースメーカー植込み症例の検討
聖隷浜松病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
小出昌秋1),國井佳文1),渡邊一正1),新垣正美1),渕上 泰1),武田 紹2),中嶌八隅2)

【はじめに】小児患者における心臓ペースメーカー治療で多用される心外膜電極は心内膜電極より寿命が短いとされているが,最近ではステロイド溶出心外膜リードにより長期間のリード機能の維持が可能であるという報告が少なくない.当院での同リード植込み患児の中~長期遠隔成績を報告する.【対象】1999~2008年 3 月に行った 9 例11回のステロイド溶出心外膜電極植込み術(心房リード 6 本,心室リード 5 本)を対象とした.対象疾患は多脾症に伴う洞不全症候群(SSS)4 名,先天性SSSあるいは房室ブロック(AVB)2 名,心筋炎後のSSS 1 名,ASD術後のSSS 1名,CAVSD, SAS術後のAVB 1 名.9 名中 2 名はAAIをDDDにあるいはVVIをDDDに変更するためにリード追加手術を行った.植込み時年齢 1 カ月~11歳(中央値38カ月),体重2.5~24kg(中央値10.9kg).【方法】手術は全麻下に第 4~5 肋間開胸により行い,リードは正中の腹直筋下を通し上腹部に導き開胸と同側に作成したポケットに本体を挿入した.モードはAAI 4 例,VVI 3 例,DDD 2 例.術後のペースメーカーチェックは外来にて 3 カ月ごとに行った.【結果】10~113カ月(平均65カ月)の経過観察で死亡例なし.リードの閾値上昇による交換はなく断線や感染もなかった.植込み時の閾値vs最終チェック時の閾値は心房で1.1 ± 0.5V vs 0.9 ± 0.5V,心室で0.8 ± 0.5V vs 1.2 ± 0.8Vと有意な上昇はみられなかった.植込み時の心外膜電位vs最終の心外膜電位は心房で5.6 ± 4.0mV vs 3.0 ± 2.7mV,心室で14.8 ± 6.9V vs 10.1 ± 6.0Vとやや低下傾向.植込み時のリードインピーダンスvs最終インピーダンスは心房で651 ± 117Ω vs 681 ± 68Ω,心室で839 ± 93Ω vs 765 ± 160Ωと変化なかった.【考察】小児心臓ペースメーカー治療におけるステロイド溶出心外膜リードは長期にわたり機能を維持しており,スタンダードな治療としてよいと考えられた.

閉じる