II-P-177
先天性房室ブロックに対する新生児期ペースメーカー植込みのトラブルシューティング
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科学分野1),小児科学分野2)
渡辺 弘1),高橋 昌1),白石修一1),林 純一1),鈴木 博2),長谷川聡2),沼野藤人2),羽二生尚訓2)

【はじめに】新生児例におけるペースメーカー植込みでは,体格が小さく,皮膚が脆弱であること,心筋病変による心不全等の問題がある.われわれが経験した合併症とトラブルシューティングについて報告する.【症例および方法】完全房室ブロックの新生児 4 例.1 例は両大血管右室起始,肺動脈閉鎖症を合併.体重は2,484g~3,128g.1 例では臍静脈からペーシングワイヤーを挿入して右室ペーシングを行い,心室穿孔を生じた.ペースメーカー植込みは出生当日が 3 例,6 生日が 1 例.胸骨正中切開あるいは剣状突起下アプローチで右室に心筋電極を縫着,ペースメーカー本体は左腹直筋下に収めた.全例VVIモードで,unipolarが 1 例,bipolar 3 例.右室穿孔例では穿孔部位の修復を併せて行った.【結果】(1)急性期合併症:unipolarで横隔膜のtwitchingが生じ,電極を追加してbipolarにモードを変更した.ペーシング閾値の上昇によるペーシング不全を 1 例に認めた.3 例は心不全が高度で,2 例では肺高血圧に対して一酸化窒素(NO)の吸入療法を行った.心嚢液貯留のため心嚢穿刺を 1 例で行った.1 例が皮膚壊死のため,本体の位置を変更した.1 例で縦隔炎となり,ペースメーカー摘出後に一時ペーシングを行い,1 カ月後に左開胸でペースメーカー植込みとブラロック短絡を施行した.(2)遠隔期合併症:ペーシング閾値の上昇によるペーシング不全を 1 例に認めた.1 例で電極が心臓に絡まって絞扼して心不全を来し,蘇生後に緊急手術を行ったが,心不全が回復せず,死亡した.2 例でうっ血性心不全が悪化して,1 例が 9 カ月後に心不全死した.他の 1 例は 1 年 7 カ月後に左房と左室に電極を追加して両室ペーシングに変更し,心不全が軽快した.【結論】新生児期にペースメーカー植込みが必要である先天性房室ブロック症例は重症例が多く,通常のペースメーカー植込みとは異なる合併症が生じる可能性が高く,植込みおよび経過観察で注意を要する.

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