II-P-179
チアノーゼ性疾患は出血量が多い—トロンボモデュリン,プロテインCとの関連—
岡山大学病院麻酔科蘇生科1),心臓血管外科2),小児科3),自治医科大学とちぎ子ども医療センター手術・集中治療部4)
戸田雄一郎1),岩崎達雄1),清水一好1),末盛智彦1),鈴木 聡1),森田 潔1),佐野俊二2),笠原真悟2),大月審一3),竹内 護4)

【背景】小児心臓手術において術後出血は比較的高い頻度でみられるが,ぜひとも回避したい合併症の一つである.特にチアノーゼ性疾患では出血が多いとされているが,その原因や真否については詳細には理解されていない.【目的】チアノーゼ性疾患が出血が多いことを検討する.さらにチアノーゼ性疾患は術前より凝固異常があると仮定し,トロンボモデュリンおよびプロテインCが術後出血とどう関連するかを検討する.【方法】2006年 1 月~2007年 8 月に施行された人工心肺を使用する 2 カ月以上18歳以下の小児心臓手術患者160名.手術室で麻酔導入時にトロンボモデュリンおよびプロテインCを測定する.術後 6 時間,24時間のドレーンからの排液量を出血量とし測定する.チアノーゼ性疾患と非チアノーゼに患者を分け,分類による出血量の検討およびトロンボモデュリン,プロテインCの差違を検討した.【結果】チアノーゼ性疾患は80名であった.年齢は22カ月(7.2~41.0),体重9.4(5.9~12.3)kg,[以上,中央値(25th~75th)で表示].男女比 = 84:76であった.術後 6 時間および24時間のドレーンの出血量はチアノーゼ群で有意に多かった.6 時間の量はチアノーゼvs非チアノーゼ 13.0(10.7~15.3)ml/kg vs 9.6(7.3~12.0)ml/kg, p = 0.045.24時間は24.9(21.6~28.2)ml/kg vs 17.0(13.6~20.3)ml/kg, p = 0.001.以上,平均(95%信頼区間).また,プロテインCにはチアノーゼの有無では有意差はなかった.しかし,トロンボモデュリンはチアノーゼ群で有意に低かった.2.1(1.5~2.7) vs 3.9(3.3~4.5)FU/ml,p < 0.001.トロンボモデュリンおよびプロテインCと術後出血の有意な相関関係は認めなかった.【結語】チアノーゼ性疾患患者では出血量が多い.チアノーゼでは慢性的にトロンボモデュリンが低値である.チアノーゼ疾患患者は術前より凝固異常を有している可能性がある.

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