II-P-181
両方向性Glenn周術期にRSウイルス感染を生じ,治療に難渋した 2 症例
富山大学医学部第一外科1),小児科2)
青木正哉1),芳村直樹1),松久弘典1),北原淳一郎1),大高慎吾1),廣野恵一2),渡辺一洋2),市田蕗子2),三崎拓郎1)

【目的】先天性心疾患の患児はrespiratory syncytial(RS)ウイルス感染による重篤な下気道感染を発症しやすいことが知られている.今回,われわれは両方向性Glenn(BDG)周術期にRSウイルス感染を生じ,治療に難渋した 2 症例を経験したので報告する.【症例 1】1 歳 6 カ月.女児.TA(IB).1 カ月ごとにpalivizumabが投与されていた.術前日に38度台の発熱を認めたが,術当日朝には解熱し,血液データ上も異常なく,BDG + ASD拡大 + PAB施行.体外循環時間23分.術後CVPが30mmHgまで上昇.心エコー上,BDGのflowは良好で覚醒に伴うチューブ不快と判断し術後 6 時間で抜管.その後も呼吸促迫が持続し,翌早朝に呼吸停止 + 心停止.再挿管後速やかに蘇生.循環動態の安定を待ち,5 日後に抜管したが,やはり呼吸促迫が出現.胸部X線像(XP)よりRS感染を疑い,鼻咽頭迅速診断にてRS抗原陽性であることを確認.経管栄養と呼吸管理にてXPの改善を待ち,19日目に抜管に成功.その後,在宅酸素療法を継続し,2 歳 7 カ月時に問題なくTCPC施行.【症例 2】1 歳 1 カ月.男児.UVH,TAPVR(IB),asplenia.1 カ月ごとにpalivizumabが投与されており,入院時の鼻咽頭迅速診断にてRS抗原は陰性.両側BDG + CAVV repair + re PAB施行.体外循環時間394分.術後 2 日目よりXPにて左上肺野の透過性低下.CVP 20mmHgに上昇.術後 3 日目,循環動態は安定し,抜管予定であったが,やはりCVP高値が持続していたため,RS感染を疑い,迅速診断でRS抗原陽性.経管栄養と呼吸管理にてXPの改善を待ち,8 日目に抜管に成功.PSVTに対するablationおよび口唇口蓋裂修復術終了後にTCPCを行う予定.【まとめ】(1)Palivizumabが投与されていても人工心肺使用後には血中濃度が低下する.右心バイパス術後にXPの異常陰影と説明のつかないCVP上昇を認めた場合,RS感染を疑い迅速診断する必要がある.(2)RS抗原陽性であれば,経管栄養と呼吸管理にてXPの改善を待ったうえで抜管する必要がある.

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