II-P-182
右心バイパス手術後の胸骨開放管理における新しい試み
神奈川県立こども医療センター心臓血管外科
小坂由道,麻生俊英,武田裕子,梶原敬義,大中臣康子

【背景と目的】重篤な心不全や縦隔洞炎を合併し術後長期間の胸骨開放管理を余儀なくされることがある.多くの場合人工呼吸管理が必要で,右心バイパス術後症例では循環管理にとって不利である.このような症例に対して胸骨動揺を抑え,早期抜管を目的として,正中開放創に対して持続陰圧吸引療法を行った.【持続吸引療法】創に合わせてポリウレタンドレッシングを形整して浅い溝をつけ,シリコンドレーンチューブを浅溝に置き,フィルムで被覆した.ドレッシングが創に完全に密着できる圧(約150 mmHg)で持続吸引した.ドレッシングとドレーンチューブは 2~5 日ごとに交換した.【症例 1】1 歳 6 カ月齢女児,左心低形成症候群.両方向性グレン手術後の低心機能症例(RVEF 33%).TCPC手術を行い,術後 9 日目にMRSA縦隔洞炎を発症し開胸管理とした.縦隔組織の癒着を待って21日目に抜管したが,呼吸は不安定で浮腫,胸水を認め血管拡張剤,利尿剤の持続点滴を必要とした.術後56日目に持続陰圧吸引療法開始.以後浮腫,胸水貯留は改善し点滴治療を中止できた.【症例 2】3 カ月齢女児.多脾症,完全型房室中隔欠損症,低形成左室,大動脈縮窄症で大動脈形成術,肺動脈絞扼術後の患者.心拡大を伴う心不全症状あり.両方向性グレン手術,Damus-Kaye-Stansel手術を行ったところ心拡大のために閉胸困難になった.幾度かdelayed sternal closureを試みたが成らず,胸骨閉鎖を断念.術後15日目から持続陰圧吸引療法を開始した.28日目に抜管.34日目にカテコラミンを中止し,一般病棟で感染治療を行った.【まとめ】右心バイパス術後,特に低心機能症例の循環管理には自発呼吸が必須である.持続陰圧吸引療法は離開した胸骨の動揺を抑え,癒着を促進し,自発呼吸を安定させるのに有用であった.

閉じる