II-P-183
インドシアニングリーン蛍光イメージングを用いた新生児の術中冠動脈造影
山梨大学医学部第二外科
鈴木章司,井上秀範,加賀重亜喜,木村光裕,志村紀彰,岡本祐樹,榊原賢士,松本雅彦

【背景】TGA等に対する大血管スイッチ術の手術成績は安定しているが,術中に移植冠動脈の血流評価が必要な場面に遭遇し得る.われわれは,成人の冠動脈バイパス術の吻合部評価や腹部大動脈瘤手術の腸管虚血判定の目的でインドシアニングリーン(ICG)蛍光イメージングを用いた術中血管造影法を開発してきたが,本法を新生児の冠動脈造影に応用したので報告する.【方法】ICG 2mgを人工心肺回路より投与し,滅菌カバーで覆った浜松ホトニクス社製の近赤外光観察カメラ(PDE: Photodynamic Eye)を用いて観察,VTRに記録した.【症例】日齢 8,体重2.6kgの男児.診断はTGA/VSDで,冠動脈パターンは 1LCx,2Rであった.特に問題なく大血管スイッチ,VSDパッチ閉鎖を施行したが,人工心肺離脱直前のTEEにて左室後側壁から心尖に向かう厚さ数mmの表在性の心外膜下血腫があることが判明した.左室壁運動には異常はなく,原因が不明であっため,術中冠動脈造影の適応とした.【結果】主要な分枝を含む冠動脈の鮮明な造影画像が得られた.血腫腔内への光造影剤の漏出は認められず,冠動脈移植とは無関係に微細な血管が破綻したものと判断した.被膜に小切開を加えてドレナージし,その後は良好に経過した.【考察】心拍出量測定や肝機能評価で用いられるICGは,750~810nmの励起波長を有する.本法では,ICGに励起光をあて,その近赤外蛍光(ピーク波長845nm)を観察している.予期せぬ理由で術中に冠動脈造影が必要となった場合には,画像の解像度,安全性とともに即応性も求められるが,本法はICG投与と近赤外波長を含む無影灯照明を落とすのみで短時間で施行でき,小児の開心術においても手術操作を妨げないという点で特に優れていると考えられた.【結論】ICG蛍光造影法は,小児の開心術において緊急に冠動脈の情報が必要となった場合に非常に有用である.

閉じる