II-P-83
小児期肥大型心筋症の臨床像と中期予後
筑波大学大学院人間総合科学研究科小児内科1),心臓血管外科2)
加藤愛章1),高橋実穂1),石踊 巧1),石川伸行1),福島紘子1),徳永千穂2),金本真也2),平松祐司2),堀米仁志1)

【背景と目的】肥大型心筋症(HCM)は若年者の心臓突然死の最も一般的な原因であるが,無症状のものも多い.さまざまな症状を呈する小児期HCMの臨床像を明らかにする.【対象と方法】1990年 1 月~2008年12月に当院で診断されたHCM症例20例(男児13例,女児 7 例)を対象として診断契機,臨床症状,心筋肥大パターン,治療と予後の関係を後方視的に検討した.【結果】診断時年齢は0.0~16.1歳(中央値6.5歳)で,フォローアップ期間は1.0~16.3年(8.5 ± 5.2年).診断契機は学校心臓検診の心電図異常が 8 例,全身性疾患の心臓スクリーニングが 5 例,心雑音が 3 例であった.診断時に症状を有したのは 3 例のみで,1 例で軽度の胸痛,1 例でチアノーゼ,Noonan症候群に伴う 1 例は心不全症状があった.心筋肥大パターンは閉塞性肥大型心筋症(HOCM)が 3 例で,典型的な非対称性中隔肥厚を呈したのは 8 例,対称性肥厚を呈したのは 2 例,心尖部肥大型は 3 例,心室中部閉塞型は 1 例あった.7 例が全身疾患(内訳はNoonan症候群 4 例,LEOPARD症候群 2 例,Danon病 1 例)に伴う二次性HCMであった.家族歴が 6 例にあり,うち 2 例は姉弟例であった.治療は,9 例に対しβ遮断薬内服を行い,10例では無投薬であった.中部閉塞型HCMの 1 例ではβ遮断薬で心不全が改善したが,HOCMの 1 例では心不全が悪化し,6 歳時に流出路心筋切除術,DDDペースメーカー植え込みを施行し,心不全は改善した.拡張相HCMは 2 例あり,診断時は著明な肥厚があったが,それぞれ 6 歳,16歳に拡張相への移行がみられ始めた.フォローアップ期間中の心臓突然死はなかったが,Noonan症候群に伴う1 例は 4 歳で死亡し,1 例は転院し,1 例は診察を自己中断し以後は経過不明である.【結論】小児期に発症するHCMは成人に比して全身疾患に伴う二次性HCMが多く,全身検索が必須である.内服治療に抵抗性のHOCMに対しては流出路心筋切除術,ペースメーカー植え込みが有用であった.

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