II-P-86
心筋生検で好酸球浸潤を認め,ステロイド治療を行った拘束型心筋症の 1 例
国立循環器病センター小児循環器診療部
内山敬達,津田悦子,松尾 倫,山田 修

【はじめに】小児の拘束型心筋症(RCM)は心内膜,心内膜下心筋の線維化・血栓形成のため拡張障害を来す予後不良の心筋疾患で,原因は不明である.肺高血圧を伴った拘束型心筋症で,末梢血中に好酸球増多を認めず,心筋生検でわずかな好酸球浸潤を認め,ステロイド治療後肺高血圧の改善と左室拡張末期圧の低下を認めた症例を経験したので報告する.【症例】8 歳の女児.生来健康でアレルギーの既往歴はない.学校検診で心電図異常(P波の増高,ST-Tの異常)を指摘された.心エコーで左房の著明な拡大と左室流入波形の拘束性パターン(E/A = 2.1,Dct = 80sec)から拘束型心筋症が疑われた.心臓カテーテル検査で,肺動脈楔入圧,左室拡張末期圧の上昇(18mmHg,19mmHg)と平均肺動脈圧の上昇(34mmHg)を認めた.心筋生検で,間質の線維化がみられ,心内膜に新鮮な壁在血栓と好酸球の浸潤が数個みられたことから好酸球性心内膜症も疑われた.末梢血中に好酸球増多は認めなかったが,RCMは予後不良であるため,家族の同意を得て,抗凝固,抗血小板療法を開始し,プレドニンの内服治療(1mg/kg/日)も開始した.プレドニン開始 1 週後,左室流入波形はE/A = 1.5,Dct = 115secとなった.4 週後にカテーテル検査を再試行,肺動脈楔入圧,左拡張末期圧の低下(10mmHg,13mmHg)を認め,平均肺動脈圧も低下(17mmHg)していた.心筋生検では,好酸球の浸潤はみられずTリンパ球を含めたわずかな炎症細胞の浸潤を認めた.心内膜は肥厚していた.【考察】アレルギーの既往がなく,末梢血に好酸球の増加を認めなかったためhypereosinophilic syndrome(HES)に伴う心病変(eosinophilic perimyocarditis)かどうかは議論を生むところである.病期によっては末梢血に好酸球増加をみない時期(血栓期)がありこの症例はその可能性がある.ステロイド治療により肺高血圧,左室拡張末期圧の改善がみられたが,今後慎重に経過観察していく必要がある.

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