II-P-88
拡張型心筋症(DCM)に対するβブロッカー治療の左室dyssynchronyへの効果—3Dエコーを用いた検討—
山梨大学医学部小児科
角野敏恵,星合美奈子,勝又庸行,喜瀬広亮,杉田完爾

【はじめに】DCMに対するβブロッカー治療は心機能の改善に有効であるが,これが左室のdyssynchronyの改善によるものであるか小児では検討されていない.今回われわれはβブロッカー治療を行った 3 例のDCMに対し治療前後で3Dエコー(Philips iE33)による評価を行った.【症例 1】日齢 0,男児.生直後より心不全を来し緊急入院,人工呼吸管理,利尿剤,プロプラノロールを開始した.治療後,左室駆出率(EF)は22%から61.3%, 左室駆出量(SV)は0.8mlから3.4mlへ増加,systolic dyssynchrony index(SDI%)は7.8%から0.8%に改善した.【症例 2】1 カ月女児.1 カ月健診時にDCMと診断され治療を開始した.利尿剤,ジギタリスで治療を開始,その後カルベジロールを導入した.導入後EFは42%から72%,SVは4.5mlから5.6mlと増加し,SDI%は3.8%から1.9%に改善した.【症例 3】7 歳 6 カ月男児.7 歳 3 カ月時に筋ジストロフィーと診断され,7 歳 6 カ月時に心エコー上左室拡大,EF低下を認め入院した.利尿剤,ジギタリスで治療を開始し,その後カルベジロールを導入した.治療後EFは14.9%から37.4%,SVは14.1mlから40.2mlへ増加,SDI%は15.3%から2.0%に改善した.【結果】治療により 3 症例ともSV, EFとも改善し,同時にSDI%も改善した.【考察】今回DCM小児例において,βブロッカー治療によりdyssynchronyが改善することが明らかになった.3Dエコーは,非侵襲的な治療評価に有効であった.3Dエコーでdyssynchronyが明らかな症例には早期から積極的なβブロッカー治療の導入を行い,3Dエコーによる経時的な評価をすべきと考えられた.

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