II-P-91
劇症型心筋炎に心筋石灰化を合併したが心機能の回復をみた学童例
宮城県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
水城直人1),新田 恩1),小澤 晃1),田中高志1),小西章敦2),安達 理2),崔 禎浩2)

【目的】補助循環が必要となる劇症型心筋炎に心筋石灰化を合併した症例は予後が悪いといわれるが,今回心機能が回復し無事に退院した症例を経験したので報告する.【症例】9 歳女児.発熱,上肢胸背部痛,嘔気,動悸のため前医を受診.心電図,血液検査で心筋炎が疑われ当院に紹介入院となった.入院時聴診で心拍不整とギャロップリズムあり.心電図はV2-V3誘導のST上昇,2・3・aVf・V5-V6誘導のST低下あり,PVCを認めた.胸X線は心胸郭比54%,肺うっ血所見なし.心エコーはLVEF 60%,LVDd 96%of N,弁逆流狭窄なし,心嚢液なし.入院後の全身状態は比較的安定していたが,間歇的な心室性不整脈があった.slowVTが出現したためICU管理後nifekalantを開始.しかしVTの頻度は増しVfと痙攣が出現.心肺蘇生を施行しながら約 1 時間後に補助循環管理を開始した.導入 2 日後から心電図上のブロック所見や虚血所見は改善あったが,心エコー上LVEF 20%前後であった.導入 7 日後に離脱を試みるも不可のため再施行.その後LVEF 58%と改善し,導入14日後に補助循環を離脱できた.この頃から心エコー上の左室心筋の高輝度所見があった.発症 1 カ月後,胸水穿刺と胸部CTで右膿胸と診断しurokinase胸腔洗浄で改善した.同CT所見で左室前壁,中隔壁,乳頭筋の石灰化を確定し,その後の負荷心筋シンチで左室前壁のviability消失を確認した.enalapril,digoxinを開始し心不全所見は徐々に改善した.中枢神経に重大な問題はないものの,下肢末梢神経障害による歩行障害1/4盲,心因反応などはあったが発症 3 カ月後に退院.心不全症状の改善あり,強い制限なく日常生活を過ごしている.【結論】劇症型心筋炎に心筋石灰化を合併しながら無事に日常生活に復帰した学童期の症例報告は見当たらない.本例は死亡リスクの高い劇症型心筋炎症例であったが経過良好となったまれな症例であり報告する.

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