II-P-94
5 日間の発熱後両房室弁の高度の閉鎖不全を来した生後 6 カ月の女児例
立川病院小児科1),北里大学医学部小児科2)
堀口泰典1),安藤 寿2),木村純人2),中畑弥生2),石井正浩2)

【背景】乳児期感染性心内膜炎(IE)により帽室弁逆流(VR)が生じた報告は少ない.【目的】生後 4 カ月時発熱,抗生物質内服で軽快したが高度VRが遺残しうっ血性心不全を呈したまれな 1 例を経験したので報告する.【症例】初診時生後 6 カ月の女児.周産期異常なし.1 カ月,3~4 カ月健診で異常なく体重増加良好であった.4 カ月時 5 日間高熱が持続し活気低下したが経口抗生物質投与を受け解熱した.しかし活気・哺乳力の低下進行し,発汗過多が出現.6 カ月健診で心雑音を指摘され紹介された.(診察所見)心音正常.Levine 3 度汎収縮期雑音,拡張期ランブルLLSBに聴取.肝 3cm触知.(検査所見)胸部XP:CTR 63.6%.心エコー図:両房室弁弁尖肥厚あり.僧帽弁腹穿孔(3mm径)と三尖弁接合不良間隙(3mm)よりVR 3 度.LVDd 2.99cm,LVEF 92.8%.心嚢液貯留中等度.卵円孔(1.7mm径)あり.心電図:Q波,ST上昇,ブロックなし.(血液)白血球数6,890,Hb 12.2g/dl,血小板45.7万,CRP 0.13mg/dl.アデノ,コクサッキー,マイコプラズマ抗体価,ASO上昇なし.抗核抗体,抗DNA抗体陰性.補体価正常.トランスアミナーゼ,トロポニンT上昇なし.(治療)直ちに利尿剤,ACE阻害剤を開始.徐々に心嚢液消失,肝縮小し活気も回復した.1 歳時,胸部XP上CTR 56.0%で経過順調となったが心エコー図上両側VR 3 度が続いている.【考案】本例は生後 4 カ月の発熱時,抗生物質内服のみで軽快したが僧帽弁弁腹穿孔も生じておりIEであったと考えられる.【結論】(1)外来投薬で解熱した 5 日間の発熱既往で高度VRを来した 1 例を経験した.(2)小児科の日常診療において発熱は最頻の主訴であるが聴診等基本的な診察を忠実に行うことが早期発見にとって肝要である.

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