II-P-95
心移植後冠動脈病変評価のための冠血流予備能の検討
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
日笠山絢香,増谷 聡,玉井明子,関  満,葭葉茂樹,石戸博隆,竹田津未生,先崎秀明,小林俊樹

【背景】心移植後患者の増加に伴い,免疫抑制剤の適正使用,拒絶反応・移植後冠動脈病変の予防・評価などの移植後管理の重要性が増している.移植後冠動脈病変の評価のために冠血流予備能(CFR)の検討を施行し,臨床的有用性につき報告する.【方法】対象は海外にて渡航心移植を施行後,免疫抑制剤を使用中の 4 名(13歳男,22歳女,5 歳女,17歳女,移植後半年~4.6年).のべ 6 回の計測を行った.CFRはドプラガイドワイヤーを左冠動脈前下行枝に挿入し,安静時の血流を記録した後,ATP 0.15mg/kg/minの投与を行って,負荷前後のaverage peak velocityの比からCFRを算出した.5 歳女児を除き,冠動脈血管内エコー(IVUS)も施行した.【結果】全例でCFRを算出でき,検査による合併症は認められなかった.13歳男,22歳女の症例においては,CFRは295~378%と良好な冠動脈予備能を示し,IVUSにおいても有意な肥厚は認められなかった.5 歳女児は,体格が小さいためIVUSは施行し得なかったものの,CFRの評価は問題なく可能であった(230%).IVUSにて明らかな冠動脈内膜の肥厚を認めた17歳女の症例では,CFRは230%と正常範囲内でやや低めの結果であり,今後の慎重な経過観察が必要であると考えられた.【考察】移植心の評価は,心筋生検,IVUSも含めた総合的評価が重要と考えられるが,CFRはIVUSを施行困難な年少児にも適用可能であり,評価が難しい心筋内小血管を含む病態把握につながると考えられる.経年的な評価により移植後冠動脈病変の伸展に関する情報を提供し,免疫抑制療法を含む管理へ示唆を与える有用な検査法として,今後さらなる検討の価値があると考えられる.

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