II-P-96
β遮断剤に加えACE阻害剤の増量が有効であった拡張型心筋症の 1 乳児例
市立札幌病院小児科1),北海道大学大学院医学研究科小児科2)
佐野仁美1),武田充人2),上野倫彦2)

【はじめに】重症心不全に対しβ遮断剤とACE阻害剤の有効性は認められているが,小児においての治療量は確立されていない.われわれはACE阻害剤の増量が有効であったと考えられる拡張型心筋症の 1 乳児例を経験したので報告する.【症例】8 カ月女児.活気不良を主訴に入院となり心エコーにて拡張型心筋症と診断された.入院時胸部X線でCTR 80%,心エコーによる%LVDd 160%N,FS 0.07と著しい心拡大,心ポンプ機能の低下を認め,NT-proBNPは92,504pg/mlと高値を示した.急性期心不全治療として利尿剤,ミルリノン持続静注を開始し,4 病日よりシラザプリルを導入,0.04mg/kg/dayまで漸増した.35病日よりカルベジロールを0.05mg/kg/dayから開始して10週間で増量し,1.0mg/kg/dayで維持としたが,この時点では%LVDd 187%N,FS 0.11,NT-proBNP 33,276pg/mlと十分な改善は得られなかった.このような重症心不全例においては ACE阻害剤の効果が不十分である可能性も考慮し,腎機能に留意しつつ168病日よりシラザプリルをさらに0.07mg/kg/dayまで増量としたところ,著明な改善傾向を示し,増量後 5 カ月でCTR 52%,%LVDd 113%N,FS 0.33,NT-pro BNP 375pg/mlまで改善した.【考察】重症心不全に対するACE阻害剤の投与量は確立されていない.通常量のACE阻害剤では無効な場合,症例によっては投与量が不十分である可能性を考慮し,腎機能に留意しながらACE阻害剤を増量してみる価値があると思われる.

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