II-P-97
呼吸器感染症の治療にクラリスロマイシンを使用したタクロリムス投与中の小児心移植患者 3 例
東京女子医科大学東医療センター小児科1),内科2)
窪野杏奈1),志田洋子1),本間 哲1),関川昭彦2),布田伸一2),杉原茂孝1)

【はじめに】タクロリムスは移植患者に頻用されている免疫抑制薬であるが,クラリスロマイシン(CAM)と併用すると血中濃度が上昇して,急性腎不全や高カリウム血症などの重篤な副作用を生じることが知られている.今回,呼吸器感染症に対し,タクロリムス投与量を調節しながらCAMで加療した小児心移植患者 3 例を経験したので報告する.【症例】症例 1:7 歳女児.拡張型心筋症で 4 歳時に米国で心移植を受けた.咳嗽,発熱 4 日目で当院を受診した.胸部聴診所見,胸部X線像にて急性気管支炎と診断され炎症反応高値のため入院加療となった.CAM投与後のタクロリムス血中濃度(トラフ値)の最高値は11ng/mlであった.一過性の高カリウム血症を認めた.マイコプラズマ,クラミジアニューモニエの抗体価上昇を認めた.症例 2:5 歳男児.単心室症.2 歳時,TCPC手術を施行した.3 歳時より心不全が悪化し,4 歳時に渡米し心移植を受けた.帰国後の経過観察のため当院入院中に咳嗽,鼻汁,発熱を認め,炎症所見の軽度上昇を認めた.CAM投与後のタクロリムス血中濃度の最高値は12ng/mlであった.一過性の高カリウム血症を認めた.鼻汁中RSウイルス抗原が陽性であった.症例 3:3 歳男児.拡張型心筋症で 1 歳時に渡米し心移植を受けた.中耳炎罹患中に咳嗽が増悪したため当科を受診した.炎症反応の上昇,胸部聴診所見,胸部X線像にて急性気管支炎合併と診断した.CAM投与後のタクロリムス血中濃度の最高値は11ng/mlであった.【考案】CAMの併用時には至適血中濃度を維持するために,タクロリムスを通常の投与量の28%から72%に減量する必要があった.体内動態に個体間,個体内変動が認められたが,3 例とも血中濃度を監視しながら治療を継続することができた.タクロリムス血中濃度の監視と投与量の微調整が必要であるが,心移植後の小児の呼吸器感染症の治療においてもCAMは有用性の高い抗菌薬であると考えられた.

閉じる