II-P-98
フォンタン術後多脾症患者における心室再同期療法—術前評価とその遠隔—
東京女子医科大学循環器小児科1),心臓血管外科2)
高橋一浩1),藤田修平1),竹内大二1),中西敏雄1),黒澤博身2)

【背景】先天性心疾患患者,特に,体心室が右室の場合(systemic RV)は遠隔期の心室機能が予後を左右する.近年,このpopulationにおいても心室再同期療法CRTが有効であるという報告がある.外科的植込みが必要であることが多く,その際の至適ペーシング部位の選択が問題になる.特に,単心室の場合はその方法が不明で,術前に至適ペーシング部位を検討し,CRTの効果を確認した報告は今までにはない.TCPC conversion時にCRT施行した多脾症患者について,術前評価および術後 1 年の遠隔評価も含め報告する.【症例】27歳男性.多脾症,右室性単心室で14歳時にclassical Fontan手術を受けている.軽度の動脈酸素飽和度の低下(92%)を認めたが無投薬で運動制限はなかった(NYHA I).26歳時心不全,心房頻拍を発症し入院.心房頻拍は再発性でDCが必要であった.抗心不全療法にて心不全症状は改善した(BNP 100~170ng/ml)がQRS幅の延長を認めた.心カテーテル造影検査で心室壁運動のincoordinationによる中等度心室機能低下と房室弁逆流を認めた.薬物抵抗性心房頻拍に対しカテーテルアブレーションを施行したがmultiple ATであり完全には治療できなかった.心室再同期療法の効果確認のため電気生理検査を施行した.組織ドプラエコーからdyssynchrony部位を確認,同部位の 2 点ペーシングにより,dyssynchronyの改善と心室圧データでの心機能指標の改善が確認できた.難治性心房頻拍に対しTCPC conversion施行,同時に,CRTを施行した.組織ドプラエコー所見から,VV delayおよびAVDを設定した.QRS幅およびCTRの減少,BNPの改善を認めた.術後 1 年でNYHA I,仕事に復帰した.頻拍の再発もない.【結語】単心室,心不全患者におけるCRTは有効で,その効果は遠隔期も維持された.至適ペーシング部位の決定,および術後管理に組織ドプラエコーは有効である.

閉じる