II-P-99
幼児期発症拡張型心筋症に対してcardiac resynchronization therapyを施行した 1 例の中期遠隔期臨床像
大阪医科大学附属病院心臓血管外科1),大阪医科大学小児科2)
佐々木智康1),根本慎太郎1),垣田真里1),小澤英樹1),勝間田敬弘1),岸 勘太2),奥村謙一2),森 保彦2),玉井 浩2)

拡張型心筋症(DCM)による心室内伝導遅延を伴った左室収縮機能低下に対するcardiac resynchronization therapy(CRT)の効果は,成人では広く認識されているが,小児領域での報告は散見されるのみである.今回,内科的管理慢性期に急性増悪を示した幼児DCMに対してCRTを施行し,術後早期から中期遠隔期での心サイズおよび心機能の改善を得た症例につき報告する.症例は,1 歳 8 カ月,女児.左室緻密化障害を伴うDCMに対して,ACE阻害剤およびβ遮断薬を中心とした内服治療で外来経過観察されていたが,感冒を契機にNYHA IV度の心不全に至り,入院加療となった.入院時,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は4,320pg/mlと異常高値であり,静注利尿剤およびmilrinone持続投与が開始された.徐々に症状とBNP値の改善(2,060pg/ml)が得られたが,milrinoneの離脱は困難であった.心エコー上,左室壁運動の改善はなく,左室dyssynchronyと中等度の僧帽弁閉鎖不全(MR)を認めた.心電図では,QRS幅は150msと延長していた.心移植も考慮されたが,患者家族のインフォームドコンセントの下,CRTが選択された.左開胸下に,左心耳基部,右室心尖部,前乳頭筋起始部である左冠動脈鈍縁枝の遠位部にそれぞれリードを留置した.CRT後,さらに症状が改善し,BNP値は激減(258pg/ml)した.Milrinoneから離脱し,術後51日目に退院した.以後,抗心不全内服治療の下,NYHA I度で経過している.術後 1 年半経過時の心エコーでは,左室拡張末期径は34.1mm(術前59.3mm),左室内径短縮率は33%(術前14%)と著明に改善し,MRは消失した.以上より,症例を適切に選択することで,幼児DCMに対しても,CRTは有効な治療の一手段となり得ることが示唆された.

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