III-MPD3-2
トラネキサム酸投与は小児心臓手術周術期の出血量を減少させる
岡山大学病院麻酔科蘇生科1),小児科2),心臓血管外科3)
清水一好1),戸田雄一郎1),末盛智彦1),鈴木 聡1),岩崎達雄1),森田 潔1),大野直幹2),岡本吉生2),大月審一2),笠原真悟3),佐野俊二3)

【背景】小児心臓手術の手術関連出血は術後管理におけるmobidity,mortalityに影響を与える因子である.抗線溶薬であるトラネキサム酸(以下,TA)は人工心肺に伴う線溶亢進に対して心臓手術に使用されている.しかし,小児先天性心疾患におけるTAの手術関連出血量に対する効果は十分に確立されていない.われわれは,小児心臓手術におけるTAの効果について検討した.【デザイン】前向き無作為比較研究.【対象】人工心肺使用下の小児心臓手術を予定された 2 カ月~18歳の先天性心疾患患者160例.【方法】チアノーゼ群,非チアノーゼ群各80例で総数160例,さらにそれぞれの群を無作為に 2 群に分け,それぞれ対照(P)群,TA(T)群を作成した.T群はTAを麻酔導入後に50mg/kg投与後,15mg/kg/hで手術終了まで持続投与した.また人工心肺充填液にも50mg/kg混注した.P群には同量の生理食塩水を使用した.一次的評価項目は手術後 6 時間,24時間での出血量とした.【結果】P群,T群間で患者背景に差は認めなかった.チアノーゼ群,非チアノーゼ群を合わせた全体において,術後 6 時間,24時間の集積出血量はP群よりもT群において有意に少なかった(6 時間:T群;9.5ml/kg(95%CI;7.2~11.8)vs P群;13.2ml/kg(10.9~15.6),24時間:T群;18.6ml/kg(15.2~22.2)vs P群;23.5ml/kg(20.0~26.9)).しかしチアノーゼ群,非チアノーゼ群それぞれでのP群,T群間の出血量の比較では差を認めなかった.【結語】小児心臓手術において先天性心疾患患者を対象にした場合,チアノーゼ患者,非チアノーゼ患者を同数含む場合でもTAは手術関連出血量を減少させた.

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