III-MPD3-3
小児心疾患ICU管理におけるNasal DPAPの積極的導入による呼吸管理
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
岩本洋一,先崎秀明,関  満,小林俊樹,石戸博隆,葭葉茂樹,竹田津未生,増谷 聡

【背景】新生児,乳児の心疾患は循環不全からの呼吸管理を余儀なくされることが多いが,長期にわたる人工呼吸管理は肺胞機械的損傷をもたらし,慢性肺疾患発症の起因となる.さらに術後の安全な早期抜管は,感染,ストレス,早期離床,医療経済等,種々の観点からのメリットがある.呼気吸気変換方式経鼻的持続陽圧呼吸法(Nasal DPAP)は,特殊な幾何学的構造を持つ持続気道陽圧(CPAP)generatorを用いて行うCPAPで,呼気弁を用いずに吸気と呼気ごとに瞬時にジェット気流の方向が変化する.従来のCPAPに比べて圧変動が少なく一定した気道内圧が保て,児の呼吸仕事量を減少させる呼吸管理法であり,低出生体重児を中心とした新生児の呼吸管理において有用性が示されている.われわれは,2006年より小児心疾患ICU管理においてNasal DPAPを積極的に導入しておりその経験を報告する.【方法と結果】Nasal DPAP導入前の術後患者39例(中央値年齢32日)と導入後の79例(中央値年齢38日)において臨床経過を比較検討した.両群の疾患背景を同等にするために,疾患VSD,PDA,ECD,単心室,TGA,TAPVRに限定した.抜管までの平均日数(6.1 + 4.2 vs 5.4 + 4.0),再挿管率(9.1% vs 5.4%)はNasal DPAP使用例で有意に少なかった.ICU滞在日数はNasal DPAP使用例で短い傾向を示したが統計学的有意差は認めなかった.また,Nasal DPAP群において,その中止後に呼吸床状の悪化を認め,再開した例が 5 例あり,Nasal DPAPの有効性を裏づける所見と思われた.【考察】Nasal DPAPは新生児,乳児心疾患患者の呼吸管理において一定の役割を演ずると思われた.今後の前方視的検討に値すると思われる.

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