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III-C-1 |
先天性心疾患の新規原因遺伝子GATA6の同定と疾患発症分子機構の解明 |
慶應義塾大学医学部小児科1),東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート2),東京女子医科大学循環器小児科3),心臓血管外科4),九州厚生年金病院小児科5)
古道一樹1),西澤 勉2),古谷道子2),新井正一2),山村英司3),石原和明4),城尾邦隆5),中西敏雄3),松岡瑠美子2),山岸敬幸1) |
【背景】重篤な心臓流出路発生異常による先天性心疾患は,生後早期に治療介入を要し,手術による修復が困難な場合予後不良である.このような疾患に対する発症予防,診断,治療戦略を考える上で,遺伝子レベルに基づいた病態の解明は必須である.発生過程での心臓神経堤細胞や二次心臓領域由来細胞を制御する遺伝子の異常が疑われるが,これまで原因遺伝子はほとんど同定されていない.【目的】先天性心疾患患者のリンパ球細胞株を用いて,網羅的な遺伝子変異解析を行うことにより,心臓流出路発生異常を来す新規疾患原因遺伝子を同定する.【方法】総動脈幹遺残20名,心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖81名の細胞株より得られたDNAを対象として,過去に動物実験で報告された心臓流出路発生に関与する遺伝子情報を基に,direct sequence法による遺伝子変異解析を行った.変異が検出された遺伝子について,その疾患発症分子機構を明らかにするために,in vitroで遺伝子産物の機能を解析した.さらに,lacZ-reporter遺伝子を導入したtransgenic mouseを作製し,心臓流出路発生において変異遺伝子が下流遺伝子の発現に与える影響をin vivoで検討した.【結果】 3 名の患者より転写因子GATA6の変異が検出され,うち 1 名は家族例であった.遺伝子変異により,GATA6の転写活性能が低下していた.in vitroおよびin vivoの遺伝子機能・発現解析により,GATA6が神経堤細胞の発生に関与する神経血管誘導分泌因子semaphorin3C,およびその受容体plexinA2のプロモーター/エンハンサー領域に存在するGATA結合配列に直接結合し,各因子の心臓流出路における発現を制御することが判明した.【結論】先天性心疾患の新規原因遺伝子として,GATA6が同定された.GATA6の異常により,胎生期の心臓流出路においてsemaphorin3CおよびplexinA2の発現が低下し,心臓神経堤細胞の発生が障害され,心臓流出路異常が発症する分子機構が明らかにされた. |
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