III-C-5
完全房室ブロックに対する心外膜ペーシングにより体心室機能障害を来した修正大血管転位症におけるHis束ペーシングの経験
九州大学病院小児科1),心臓血管外科2),循環器内科3),福岡市立こども病院循環器科4)
宗内 淳1),山村健一郎1),竹本真生3),塩川祐一2),中島淳博2),田ノ上禎久2),佐川浩一4),池田和幸1,4),山口賢一郎1),富永隆治2)

【背景】修正大血管転位症(cTGA)では房室結節から右室流出路方向へHis束が走行しているため完全房室ブロック(CAVB)をしばしば合併する.CABV合併のためペースメーカー植え込み(PMI)を行うと体心室(解剖学的右室)機能低下が早期に生じることも知られている.このような症例に対し心臓再同期療法が試みられているが,その臨床効果は不明である.【症例】 8 歳女児.心室中隔欠損(VSD),心房中隔欠損(ASD)を合併したcTGA(SLL)と診断され,肺高血圧のため生後 1 カ月時に肺動脈絞扼術を施行した.その後,CAVBが進行したため 1 歳時にASD,VSD閉鎖術に加えて,心外膜側にPMIを施行された.8 歳時より易疲労感がみられるようになった.胸部X線ではCTR = 62%と心拡大を認め,心電図上,すべて心室ペーシングでQRS幅は194msであった.心エコー図検査所見は,駆出率低下(EF < 30%),高度のdyssynchrony,重度左側房室弁逆流を認めた.BNP値260pg/mlであった.当初両心室ペーシングへのアップグレードの適応を検討したが,手技の複雑化などの理由からヒス束ペーシングを施行した.ヒス束PMI後,胸部X線でCTR58%と縮小し,心電図上,QRS幅が92msと短縮した.心エコー検査でもdyssynchronyおよび左側房室弁逆流の改善を認め,BNP値155pg/mlと低下した.【考察】cTGAではヒス束は右側房室弁前方の房室結節から,肺動脈流出路側より心室へ広がっている.本症例のように乳児期に心外膜ペーシングを行った症例は早期にヒス束ペーシングへ移行させることで右室形態を持つ体心室機能の温存を図ることができる可能性を示唆した.

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