【目的】先天性大動脈弁疾患に対してRoss（Ross-Konno）手術は成長，抗凝固療法の点で有用な術式であるが，遠隔期の移植自己肺動脈弁（PA autograft）の機能不全が問題となる場合もある．今回，その中期遠隔期成績について検討した．【対象】1997年11月～2008年12月にRoss（Ross-Konno）手術を施行した31例のうち15歳以下の小児例18例を対象とした．手術時年齢 3～15歳（平均9.9歳），体重12.7～62.0kg（平均31.2kg），術前診断は先天性AS 6 例，AR 5 例，ASR 7 例（うち二尖弁症例は11例）．平均観察期間は5.7年．【術式】全例PA autograftによる大動脈基部置換を行い，弁輪拡大手術（Ross-Konno手術）を 3 例，弁輪縫縮術を 2 例に行った．PA autograftの縫着方法は全例mattress吻合で行い，1999年以降の14例は自己心膜または余剰大動脈壁のstripによる弁輪縫合部補強を行った．【結果】手術死亡，遠隔死亡を認めず，全例NYHA I度．再手術症例 1 例（大動脈偏位による右肺動脈狭窄症例）．術後心エコーでASを認めず．ARはnone～trivialが13例（72％），mildが 3 例（16％），moderateが 2 例（11％）．術後早期/遠隔期のPA autograft弁輪径を実測値および対正常比で比較検討すると実測値は17.6 ± 2.3mm/21.3 ± 3.0mmと有意（p < 0.05）に増加し，一方対正常比は103.9 ± 5.9％N/106.9 ± 12.5％Nと有意な変化は認めなかった．AR moderateを認めた 2 例のLVDd％N/LVEFはそれぞれ101.7％N/65.5％，98.0％N/78.0％と左心機能に問題を認めておらず，外来にて経過観察中である．【考察】当院での小児Ross（Ross-Konno）手術後の中期遠隔期においてPA autograftの弁機能は良好であった．弁輪径に有意な増加を認めたが対正常比では有意差なく，小児Ross手術後におけるPA autograftの成長を示唆すると考えられた．しかしmoderate AR例やValsalva洞拡大による再手術例も認めており，慎重な経過観察が必要である．