III-C-13
上大静脈還流型部分肺静脈還流異常症に対するDouble Decker法の長期遠隔成績
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科1),京都府立医科大学心臓血管外科2),京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児内科3)
田畑雄一1),山岸正明1),宮崎隆子1),前田吉宣1),立石 実1),谷口智史1),川尻英長1),夜久 均2),岡建城3)

【目的】上大静脈還流型の部分肺静脈還流異常症(PAPVC)の修復術において,遠隔期SVCおよび肺静脈(PV)狭窄,上室性不整脈が問題となる.われわれはこれらの問題点を回避するため右房(RA)小切開,SVC連続性保持,最小限の縫合とストレートパッチによる心房内血流転換を行うDouble Decker法を基本術式としている.今回,本術式の遠隔成績について検討した.【対象と手術】1998年11月~2008年12月に本法を用いてPAPVC根治術を施行した14例を対象とした.手術時年齢は中央値2.4歳(0.9~17.5歳),手術時体重は中央値13.5kg(5.4~62kg).合併心奇形は心房中隔欠損症(ASD)9 例,TOF 2 例,DORV 1 例,三心房心 1 例,大動脈弁疾患 1 例,VSD 1 例であり,同時修復術を施行.Double Decker法:右心耳からSVC接合部まで稜線に沿いRAを縦切開.ASDからSVC開口部を覆うようにストレートパッチ(自己心膜)を用いて心房内血流転換.ASD非合併 5 例では心房中隔壁をU字状に切開,中隔flap作成して補填物非使用の心房内血流転換を施行.SVC上壁をPV還流部頭側でU字状に切開し,背側に転位させSVC下壁内面に縫着し,肺静脈還流路を作成.右心時flapをSVC上壁(外壁)~遠位側SVC開口部に吻合し体静脈血流路を作成.【結果】術後経過観察期間は中央値45.7カ月(最長10.2年).経過中,早期死亡,遠隔期死亡および再手術例,SVC症候群を認めず.全例無投薬でNYHA I度.術後心エコーやMRI検査による評価では,SVCおよびPV狭窄例を認めず.術後心電図で上室性不整脈の発生例はなし.【考察】SVC還流型PAPVCに対し,Double Decker法による血流転換術を行い良好な早期から遠隔期成績を得た.本法はa)右房小切開により分界稜,洞結節を温存,洞結節栄養血管を温存することで上室性不整脈を予防,b)十分なPV-LA間およびSVC-RA間交通を確保,ASD非合併例においても心房中隔壁flapを利用することで補填物の使用を回避し,術後SVCおよびPV狭窄を予防できる優れた術式であると考える.

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