III-C-17
大動脈弁輪拡大を必要とする大動脈弁置換手術の検討
長野県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2)
原田順和1),坂本貴彦1),梅津健太郎1),松下 弘1),安河内聰2),瀧聞浄宏2),梶村いちげ2),武井黄太2),井上奈緒2),田澤星一2),中野裕介2)

【背景】大動脈弁輪拡大を必要とする大動脈弁置換手術には,自己肺動脈弁,ホモグラフト,人工弁を使用する方法が行われてきた.【目的】大動脈弁輪拡大を必要とした大動脈弁置換手術症例を検討し,当院での手術方法の方針を検討すること.【対象】 1993年 6 月~2008年12月の15年間に当院で経験した大動脈弁輪拡大を必要とした大動脈弁置換術15例を対象とした.疾患の内訳は以下のとおり.大動脈弁狭窄 ± 大動脈弁下狭窄(6),大動脈離断複合術後(3),感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全(2),総動脈幹症(3),大動脈肺動脈窓術後(1).手術時年齢:3 カ月~20歳(中央値31.5カ月),手術時体重:4~68kg(中央値23.5kg).【結果】手術死亡 2,遠隔死亡 1. 手術死亡例はいずれも感染性心内膜炎による大動脈閉鎖不全を生じた症例で,それぞれ自己肺動脈弁,凍結保存同種大動脈弁を用いて大動脈弁置換手術を行った.遠隔死亡例は大動脈離断複合後の大動脈弁下狭窄の進展のため,SJM17HPで 6 カ月,4 kgで大動脈弁置換手術を行った.術後経過は順調であったが,口唇口蓋裂の術後に人工弁感染症を生じて死亡した.生存例12例は,術後経過観察期間18~178カ月(中央値70カ月)であり,抗凝固療法下にNYHA I度の生活を送っている.【結語】大動脈弁輪拡大を必要とする大動脈弁置換術は,術前状態の問題ない症例では,手術成績,遠隔成績とも良好であった.感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全症の症例は,手術介入時期の再検討が必要である.今後とも,機械弁を中心とした大動脈弁置換手術を行っていく方針である.

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