III-C-18
先天性心疾患術後の縦隔炎の治療成績
岡山大学病院心臓血管外科
鵜垣伸也,笠原真悟,海老島宏典,櫻井 茂,川畑拓也,宮原義典,小谷恭弘,徳永宜之,井上陽一,新井禎彦,佐野俊二

【背景】術後縦隔炎は少ないながらも一定の頻度で発症し,その治療管理においては各施設でさまざまな方法が論じられている.また,起因菌にも地域性があり,抗生剤の治療も含め,世界各国の報告をそのままあてはめることも議論のあるところである.今回,われわれは心臓手術後縦隔炎に対し積極的なデブリドメント後,持続洗浄またはVAC(vacuum assisted closure)を行い良好な成績を得たので報告する.【対象】2002年12月~2008年12月の10歳以下の小児心臓手術1,654例中,術後縦隔炎と診断した15例を対象とした.年齢は20 ± 19カ月,体重は8.2 ± 3.6kgであった.手術はTCPC 4 例(心外導管 3 例,心内トンネル 1 例),肺動脈絞扼 1 例,心室中隔欠損術閉鎖 2 例,動脈スイッチ 1 例,BTシャント 2 例,両方向性グレン 3 例,総肺静脈還流異常修復 1 例であった.診断は発熱,創部排膿,発赤,胸骨離開,縦隔内ドレーンからの排菌などに加えCTで確定診断した.【方法】準緊急で開胸,可及的にデブリドメントを行い胸骨は開放のままで,皮膚のみ閉鎖した.適切な抗生剤の治療とともに広範囲縦隔炎に対しては0.05%ポピドンヨード入り生食で持続洗浄を,限局性縦隔炎に対してはVACを行った.3 日ごとに再洗浄,デブリドメントを行い,ドレーン排液や心嚢内組織からの培養陰性を確認後,補填物なしに二期的胸骨閉鎖を行った.【結果】起炎菌はMRSA 9例,MSSA 1 例,S.Epidermidis 2 例,E. Faecalis 1 例,CNS 2 例であった.14例に持続洗浄を,1 例にVACを施行した.閉胸後,抗生剤を 2~4 週続け,死亡例なく全例でドレナージ術後52 ± 29日目に退院できた.持続洗浄を行った 1 例のみに退院後当日に胸骨下部の限局性縦隔炎を再発したが,VACを行い51日目に退院した.現在,退院後11 ± 12カ月の全症例の観察期間中に明らかな再発は認めていない.【結論】小児心臓手術後縦隔炎に対しての持続洗浄またはVACを用いた当院の治療方針は起因菌種によらず有効である.

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