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III-D-5 |
小児の閉塞性肥大型心筋症の臨床像と予後 |
国立循環器病センター小児循環器診療部
吉澤弘行,津田悦子,坂口平馬,宮崎 文,矢崎 諭,山田 修 |
【背景】小児の閉塞性肥大型心筋症(HOCM)は頻度が少なく,治療に難渋する.【目的】小児期発症のHOCMの臨床経過,治療の介入による予後を明らかにする.【対象】1978年から当院を受診したHOCM患者19例(男 9 例,女10例)について,診療録より後方視的に検討した.追跡期間は 1 カ月~21年(中央値5.8年)であった.【結果】Noonan症候群は 5 例,HCMの家族歴は 6 例にみられた.診断の契機は心雑音11例,心電図異常 2 例,失神・胸痛などの有症状 4 例であった.HOCM診断時の年齢は 0 ~15歳(中央値 4 歳)であった.うち 9 例は初診時左室内圧較差を認めなかったが,1 カ月から 5 年の経過で左室流出路狭窄(LVOTO)が出現した.心臓カテーテル検査と心筋生検は18例に施行され,LVOT圧較差は30~152mmHg(71.2 ± 35.4mmHg)であった.心筋生検で錯綜配列が15例(83%)にみられた.経過中,心不全の出現は 8 例(42%)にみられた.薬物治療は17例に施行され,β遮断薬15例,利尿剤10例,ACE阻害剤 4 例,1a群抗不整脈剤 8 例であった.LVOTO再建は心不全がみられた 5 例(26%)に施行され,外科治療 4 例(myectomy 2 例,apical-aortic conduit 1 例,MVR 1 例),経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA) 2 例であった.1 例はPTSMA後に急性心筋梗塞のため,緊急にmyectomy + MVRが施行された.不整脈についてはPSVT 2 例にablationが施行され消失,VTが 2 例にみられた.LVOTOの改善は 6 例にみられ,β遮断薬のみ 1 例,β + 1a群抗不整脈剤 2 例,外科治療 3 例,PTSMA 1 例であった.死亡は 5 例(26%)で,突然死 2 例,心不全 2 例,手術後の不整脈による死亡 1 例であった.Kaplan-Meierによる生存率は 5 年88%,10年43%であった.心不全回避率は 5 年で77.0%,10年で38.5%であった.心不全の発症が出現した群とない群での死亡率はそれぞれ50%,9.1%で有意差を認めた(p < 0.05).【結論】薬物療法抵抗性で心不全の発症がみられた場合,予後不良であるため,左室流出路の解除が必要である. |
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