III-D-7
左室心筋緻密化障害39例の検討
大垣市民病院小児循環器科
太田宇哉,田内宣生,倉石建治,西原栄起

【背景】左室心筋緻密化障害は経過とともに心機能が低下する予後不良の疾患と報告されている.当科では重症例はなく自覚症状に乏しい症例が多い.今回,39人の患者を対象として後方視的に検討した.【方法】性別,家族歴,心疾患合併の有無,発見のきっかけ,緻密化障害の部位,X-to-Y ratio,治療,心電図所見について検討した.また,10歳前後のLVEF,LVDd%N,不整脈の有無を比較検討した.【結果】男女比は26:13,家族歴では左室心筋緻密化障害を 1 組,拡張型心筋症 4 例,虚血性心疾患 3 例,不整脈 2 例,糖尿病 4 例,気管支喘息 3 例であった.基礎疾患はPPA 1 例,TOF 1 例,VSD 6 例,ASD 3 例,AR 3 例(うち 2 尖弁 2 例),僧帽弁逸脱症 1 例,川崎病後 5 例であった.発見のきっかけは検診15例,心雑音 4 例,心疾患のフォロー中17例,胸痛 2 例,左室心筋緻密化障害の家族歴 1 例であった.X-to-Y ratioは0.23~0.47(median 0.334)であり 8 例にアスピリンの予防内服施行していた.緻密化障害部位は心尖部 8 例,心尖部から後壁15例,心尖部から側壁,後壁15例,左室および右室 1 例であった.心電図異常は20例の51.3%に認められ,完全右脚ブロック 2 例,不完全右脚ブロック13例,両室肥大 1 例,右室肥大 1 例,異常Q波 1 例,ST低下 1 例,QT延長 1 例,1 度房室ブロック 2 例,2 度房室ブロック 1 例であった.10歳未満16例ではLVEF 59.0~78.2%(median 70.0%)LVDd%N94.4~111.1(median 100.0)であり,不整脈はVPC 2 例,SVPC 1 例を認めた.10歳以上23例ではLVEF 50.4~75.6%(median 67.3%)LVDd%N75.8~111.8(median 99.6)であり,不整脈はVPC 7 例,SVPC 3 例を認めた.【考察】約半数が検診や心雑音を契機に偶然発見され心機能は正常であった.著しい心機能低下例はなかった.心電図異常は約半数にみられ,不整脈は10歳以降に高率で発生していた.心機能は10歳前後で比較検討したがはっきりとした差はみられなかった.

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