III-D-11
新生仔ラットにおけるフロセミドの動脈管拡張作用
東京女子医科大学循環器小児科1),神奈川県立こども医療センター新生児科2)
豊島勝昭1,2),門間和夫1),中西敏雄1)

【背景】未熟児動脈管開存症において抗心不全治療やインドメタシンによる乏尿の予防としてフロセミドは投与される.フロセミドは腎臓においてプロスタグランジンEの産生を促進するため,動脈管閉鎖を阻害する可能性を示唆する臨床報告もある.フロセミドの動脈管への影響を直接証明した研究はない.【目的】新生仔ラットにおけるフロセミドの動脈管収縮遅延作用や動脈管拡張作用を調べる.【妊娠ラットへのフロセミド投与実験】妊娠21日(満期:21.5日)の親Wistarラットに1,10,100mg/kgのフロセミドを皮下注射した.フロセミド皮下注射 4 時間後に帝王切開を施行した.娩出した新生仔ラットを環境温33°Cで保育し,生後15,30,60分に-80°Cのドライアイス―アセトンに投入し全身急速凍結法で固定した.胸部をミクロトームで切り,実体顕微鏡とミクロメータ下に動脈管内径(DA)を計測した.対照である無投薬の新生仔の生後 0,15,30,60分のDAは80(×10μm),28,12,8であった.帝王切開の 4 時間前にフロセミドを母胎投与した新生仔の生後 0,15,30,60分のDAの収縮は軽度遅れ, 100mg/kg:80,68,30,23, 10mg/kg:82,66,31,27, 1mg/kg:79,54,39,23であった.【生後60分の新生仔ラットへのフロセミド投与実験】胎生21日に娩出した新生仔ラットを環境温33°Cで保育した.生後60分にフロセミド(1mg/kg)を皮下注射し,生後90,120,180分にDAを測定した.生後60,90,120分のDAは,無投薬の新生仔では8,6,2, 生後60分にフロセミド投与した新生仔では14,25,4とDAは軽度拡張した.生後60分にフロセミドとインドメタシン(1mg/kg)を同時投与した新生仔では5,10,3であった.【結論】新生仔ラットにおいてフロセミドは動脈管収縮遅延作用や動脈管再拡張作用を有する.インドメタシンはフロセミドの動脈管拡張効果を減弱する.

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