I.臨床修練

1.2 年次

  1. 頻度の高い先天性心疾患における病態を把握し,治療方針を理解し,一般的な治療成績と長期予後,自然歴を提示できる
    心室中隔欠損,心房中隔欠損,房室中隔欠損,動脈管開存,ファロー四徴,大血管転位など
  2. 頻度の高い後天性心疾患の病態を把握し,自然歴,治療方針を理解する
    川崎病,起立性調節障害,心筋疾患など
  3. 小児循環器疾患について病歴聴取ができ,心不全症状,チアノーゼ発作などの病態の変化や,家族性の有無などを把握できる
  4. 新生児,乳児,小児,成人の各年齢において,正確に身体所見を取ることができ,心疾患の心血行動態,主要徴候を把握し鑑別ができる
  5. 身体所見から疾患の緊急性を理解し,適切な措置をすみやかに実施できる
  6. 以下の検査の実施と解釈
    • 血液(CBC),尿,生化学的検査結果(動脈血ガス分析,心筋傷害指標などを含む)を評価できる
    • 胸部X線写真の読影ができる
    • 12誘導心電図を記録でき,所見を正しく評価し心疾患の鑑別診断ができる
    • 心電図記録から不整脈の診断ができ,治療の必要性と計画を立てることができる
    • 運動負荷試験が施行でき,結果を評価できる
    • ホルター心電図の適応が決定でき,結果を解釈できる
    • 心エコー検査(経胸壁心エコー)による基本的な心疾患の診断ができる
  7. 以下の治療管理ができる治療,管理
    • 気道確保,心肺蘇生,人工呼吸管理を含む救急救命の方法を実施できる
    • 小児の薬用量,服薬方法などの基本を知り,病態に応じた適切な使用ができる
    • 循環器治療薬の適応,作用機序,薬用量,投与方法,副作用を知り,病態に応じた使用ができる(強心薬,血管拡張薬,ACE阻害薬,ARB,β遮断薬,利尿薬,抗不整脈薬など)
    • 抗凝固療法・抗血小板薬の種類と特徴,副作用を理解し,適切な治療管理ができる
    • 循環器疾患の病態に応じた治療と管理ができる(急性,慢性心不全,無酸素発作, 低酸素血症,不整脈などに対する薬物および非薬物治療を含む)
    • 心血管疾患の基本的な手術の適応,時期,方法を理解し,心臓血管外科医と共同で治療計画を立てることができる
    • 心血管疾患の周術期管理のポイントを理解し,心臓血管外科医と共同で治療計画を立て,治療にあたることができる
    • 学校心臓検診要管理者の適切な管理基準の決定と正確な管理表の記載,管理と生活指導ができる

3-5年次

  1. 新生児危急心疾患やまれな先天性心疾患における病態を把握し,治療方針を理解し,一般的な治療成績と長期予後,自然歴を提示できる
    冠動脈瘻,単心室,左心低形成症候群など
  2. 頻度の高い後天性心疾患の病態を把握し,自然歴,治療方針を理解する
    肺高血圧,心臓腫瘍,二次性心筋疾患など
  3. 以下の検査の実施と解釈
    • 心臓カテ-テル検査の適応とリスクを理解し,基本的手技を習得し,血行動態,造影所見を評価できる
    • 学校心臓検診要精検者に対する検査計画を立てることができる
    • 心臓電気生理学的検査の適応と基本的手技,およびその判読の方法を理解できる
    • 胎児心エコー法の適応と基本的手技と断面を理解できる
    • 経食道心エコー法の適応と基本的手技と断面を理解できる
    • 心臓MRI,CT,核医学検査の適応と基本的な撮像方法,およびその結果を理解できる
    • 呼気ガス分析による心肺機能検査の基本とその評価を理解できる
    • 心血管疾患の病理学的検査の結果を理解できる
  4. 以下の治療管理ができる治療,管理
    • ペースメーカーおよび植込み型除細動器の種類,特徴,方法,合併症について理解し管理ができる
    • 心臓カテーテル治療の適応と手技およびリスクが理解できる
    • 補助循環の種類,特徴,方法,合併症について理解できる
    • 心移植の適応と現状が理解できる
    • 妊娠出産時の生理学的変化を理解し,心疾患合併妊娠の適応の理解,妊娠,出産時合併症の予防,管理ができる.
    • 未修復疾患における慢性チアノーゼの全身への影響を理解し管理できる
    • 成人期は,修復術後遠隔期の罹病率,生命予後,不整脈,心不全,突然死,再手術,加齢に伴う病態変化,社会心理学的問題などを理解し,管理ができる.小児循環器医だけではなく,循環器科医,内科各専門医,心臓血管外科医,産科医などとのチーム医療を行うことができる

II.行動教育

  1. 指導医と共同で患者の担当医となることにより以下について習得する
    • 患者・家族とのコミュニケーション,心理的および社会的サポート
    • 患者家族に対する説明と,十分なインフォームドコンセント
    • わが国における保険医療制度,公的扶助制度
  2. 毎週の小児循環器カンファレンスおよび心臓血管外科との合同カンファレンスを通じ,心臓血管外科医,看護師,検査技師など医療関係者と綿密な連携を構築し,自己のできる診療(技量)範囲を見極める
  3. 小児循環器学会,地方会などへの演題発表を目指した臨床研究の中で小児における倫理的問題の特異性,個人の保護,医療統計などについての理解を深める
  4. 医療安全に関する講習会を年 1,2 回開催する